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Grigoriy Kogan

本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。

長文ご容赦。ここ5年間、私は自分が描いたカートゥーン(一コマ漫画)を雑誌社に売って副収入を得てきました。いろいろな動物がビジネススーツを着ているカートゥーンです。しかし最近、このカートゥーン業界があまりにも時代遅れで、効率が悪いということを強く感じるようになってきました。そこで、この業界の古い秩序をひっくり返す「ある仕組み」を作り、カートゥーン作家が自身の作品からもっと収入を得られるようにしようと思い立ったのです。

この5年の間に、正社員として3つの職種を経験しました。造船技師からWebプロジェクトマネージャに転身し、今は マーケティングコンサルタント をしています。そして、その間ずっとカートゥーンを描いては雑誌に投稿し、掲載してもらっていました。

『ザ・ニューヨーカー』や『ハーバード・ビジネスレビュー』などの雑誌で、下のようなカートゥーンを見かけたことがありませんか? そう、こんな感じの作品を描くのが私の仕事です。ギャラは、掲載された作品1枚につき1万5,000円から7万円程度。主に このような スーツを 着た 動物が バカなことを 言っている カートゥーン を描いて、それなりの小遣いを稼いできました。

"Sample Cartoon of Animals in Business Suits"

この作品は6万5,000円になった。”アンテロープのうねった角を描きたかった”というのがこれを描いた一番の動機だったと思う。

収入(年収にして20万~50万円ほど)に加えて、カートゥーンを描く喜びそのものも、この仕事のやりがいです。しかし時が経つにつれて、こうした「ギャグ・カートゥーン」を取り巻く現実に不満を持つようになってきました。まとめると、下記の3つになります。

  1. “歩留まり”が低すぎる。名を知られたカートゥーン作家ですら、平均で20枚描いて買い取ってもらえるのは1枚だけ。
  2. カートゥーンに対して、まともな支払いをしてくれる雑誌社が非常に少ない。もし1社も採用してくれなかったら、その作品の”潜在的収益力”はほぼゼロになってしまう。
  3. 雑誌社は未発表のカートゥーンしか購入してくれない。つまり1枚の作品が1度しか利益を生まないということ。

こういった事情から、カートゥーン作品の潜在的収益力は、最初はある程度高いにもかかわらず、時間の経過とともに急速に低下することになります。

"Cartoon Earning Potential Over Time"

一度こうなってしまうと、他の雑誌社に当たっても、その作品が将来利益を上げる可能性は極めて低い。

作家の多くは、引き出しの中で埃をかぶった、またはパソコンのハードディスクの中に埋もれた、何千枚ものカートゥーンを保管しているはずです。でもそれはさっき挙げた事情のせいであって、決してそれらの作品に価値がないわけではありません。

"Cartoon Published in 2009"

このカートゥーンは掲載時の2009年に1万5,000円で売れたが、そこから先、利益を生むことはなかった。

私は、そうした”未発表の作品の価値”をどうにかしてお金に変えられないかと考えるようになりました。もしそんな方法があれば、他の作家が未発表で眠らせている何千、何万ものカートゥーンを活用し、価値を生み出すことができるかもしれません。

そうしてたどり着いたのは、カートゥーンが雑誌などの印刷物だけではなく、ブログや会社のニュースレター、プレゼン資料などにも効果的に使えるという事実です。世の中には雑誌の編集者より、毎日プレゼン資料を作っているビジネスマンのほうが断然多いですからね。そこに(大きくはないけれど、ゼロではない)需要があるのではないかと考えました。ブロガーやビジネスマン、教師といった人々が、面白いカートゥーンを必要としているのです。実際、 ジェイソン・コーエン42Floors などの有名なブロガーが、自分のブログにカートゥーンを載せています。

"Gag Cartoon Being Used on a Blog"

42Floorsのブログには、いつも内容に合ったギャグ・カートゥーンがうまく使われている。

もっとも私以外にも、すでにそのことに気づいている人たちはいたようです。

  1. 『ザ・ニューヨーカー』は雑誌に掲載されたカートゥーンをオンライン販売している。
  2. あるイギリスの会社は、さまざまな作家による大量のカートゥーンをオンライン販売している。ShutterStock(シャッターストック)は写真を販売するサイトだが、そのカートゥーン版。
  3. カートゥーン作家の中にはお金をかけて自分自身のWebサイトを立ち上げている人たちもいる。販売されているのは、その作家の作品のみ。

しかし、私はこの程度では満足できませんでした。これでは、大多数のカートゥーン作家が抱えている問題の解決にはなりません。以下のような理由からです。

  • そもそも『ザ・ニューヨーカー』にカートゥーンを掲載してもらうのはとても大変なので、サイトに作品を載せるまでが大変。運良く1枚すべり込ませたとしても、それ以外の作品はすべて手元に残る。
  • イギリスの会社が作ったサイトに掲載してもらうのは、もう少しハードルが低いかもしれないが、サイト自体がかなり時代遅れで非効率。気に入る作品を探して購入するまでの手順が煩雑すぎる。作品の収益を最大化するための企業努力がなされていない。
  • 他の企業や個人のサイトに勝てるだけの多機能なECサイトを開発するスキル/リソースを、ほとんどのカートゥーン作家は持っていない。

これらを考慮に入れた結果、私は路線変更することにしました。カートゥーンを描いて掲載してもらうという今までの努力をやめて、自分で「ある仕組み」を作ることにしたのです。これが完成すれば、カートゥーン作家は未発表の作品から収入を得られます。また高品質のカートゥーンを、リーズナブルな価格で手軽に探したいという買い手のニーズに応えることもできます。こうして GagCartoons.comは誕生しました。

GagCartoons.comは、さまざまな作家のカートゥーンを集めたサイトです。作品はトピックやキーワードで簡単に検索でき、ライセンス購入とダウンロードの手順も非常にシンプルです(たったの2クリックで済みます)。ライセンスの販売回数には制限を設けていないので、掲載をやめない限り、作品には将来利益を生み出す可能性が存在するということです。

"Earning Money from Licensing Cartoons"

カートゥーン作家は何もしなくても、それまで埃をかぶっていた作品から利益を得ることができる。

この仕組みがあれば、たとえカートゥーン作品が雑誌に投稿され出版された後でも、その作品価値はゼロになりません。また出版物掲載のための手続きとは違い、作家の作業は画像ファイルをアップロードするだけです。

さらに先ほど紹介した2つのサイトと違い、GagCartoons.comにアップすれば一時的に作品の潜在的収益力が上がるだけでなく、その後も上り続けていきます。なぜかというと、私が自分のマーケティングと最適化の知識を駆使して、これからどんどん販売を促進していくつもりだからです。

面倒な雑誌への投稿は一切やめにして、オンラインのライセンス販売だけで収入を得る作家も出てくるかもしれませんね。

"Earning Revenue from Cartoons Online"

今までよりずっと楽に作品から利益を上げる方法。

今はまだ”概念実証”(または”市場実験”)の段階ですが、私は現在、このサイトを採算の取れるビジネスに育てるべく自分の時間の20%を投入しています。自分のためだけでなく、必ず他のカートゥーン作家たちのためになるはずだと信じて。

私自身はプロジェクトやビジネスの舞台裏についての読みものが好きなので、このプロジェクトについても、そうした裏側を書いていきたいと思います。「面白くて、ためになる」と思ってもらえるといいのですが。次回の記事では、プロジェクトの進捗情報や具体的な数字、当面の課題と対策などをシェアするつもりです。どうぞお楽しみに!

監修者
監修者_古川陽介
古川陽介
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 グループマネジャー 株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 Node.js 日本ユーザーグループ代表
複合機メーカー、ゲーム会社を経て、2016年に株式会社リクルートテクノロジーズ(現リクルート)入社。 現在はAPソリューショングループのマネジャーとしてアプリ基盤の改善や運用、各種開発支援ツールの開発、またテックリードとしてエンジニアチームの支援や育成までを担う。 2019年より株式会社ニジボックスを兼務し、室長としてエンジニア育成基盤の設計、技術指南も遂行。 Node.js 日本ユーザーグループの代表を務め、Node学園祭などを主宰。