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Katelan Cunningham

本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。

出来の良いUXデザインとUIデザインはプロダクトを全く別の新しいレベルのものにしてくれます。しかし、コミュニケーションがうまくできていなければ、クライアントにとってもデザイナにとってもいい結果は生まれません。

UXデザインとUIデザインのプロセスがうまくいけば、ユーザにとってシンプルで明快な使いやすいプロダクトができ上がります。

DUX はエストニアに事務所を構えるKristian LemberとKevin Crepinの2人が経営しているUX/UIデザインのスタジオです。彼らは使い勝手の良いプロダクトを作るエキスパートです。DUXでの業務は、レストラン予約に 便利なアプリ や自分に合った電気会社の料金プランを検索できる サービス など多岐にわたっています。

現在もてはやされている リーンスタートアップの考え方 にあるように、大企業でさえも今はLemberたちが経営するような小規模のスタジオに仕事を依頼するほうが大きなエージェントに頼むより有益であるということに気付き始めています。Lemberは、「今や少人数のチームのほうが、よりプロフェッショナルでよりダイナミックだ。小規模のほうが、より専門的に焦点を絞って仕事ができるんだ」と言っています。

DUXでは、自分たちの専門知識をうまく生かしてUXデザインと UIデザイン に特化して運営しています。Lemberは「経済や古くからの習慣が変わっていくのと同じように、私たちも変化をし続けている」と言っています。

それぞれの仕事とは?

UXデザイナやUIデザイナと一緒に仕事をするなら、まず彼らが何をする人たちなのか知る必要があるでしょう。Lemberは、UI(ユーザインターフェース)デザイナのことはよく知られているが、UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナはまだあまり知られていない、と言います。

業界の人間ですらUXは新しいものと認識しているから、UXデザイナの”一番のミッション”は自分たちの仕事がどういうものであるか説明することだ、とLemberは言っています。今回の記事はそのミッションをLemberが実行したものと考えてください。

UXデザイナ

UXデザイナは、 プロセスの各段階 でユーザがプロダクトやサービスをどのように体験することになるのか、というコンセプトをデザインします。例えば、「ユーザがここをクリックすると、どこに飛ぶのか」や「今の状態から1つ前に戻りたい場合には、ユーザはどうすればいいのか」というようなことをUXデザイナは ワイヤーフレーム やフローチャートやストーリーボードを使って作成していきます。

UIデザイナ

UIデサイナは、UXデザイナとは違ってプロセスをデザインしていくというよりも、プロダクトのレイアウトをデザインします。UXデザイナが、ボタンはどのページのどこに置こうか、などを考える一方でUIデザイナは、デザインの要素をどのようにレイアウトしようかや、ユーザにどう視覚的に訴えるかなどを設計していきます。

この2つは同じポジションの仕事であるとしばしば勘違いされてしますが、それは違います。しかし、UXデザインとUIデザインが2人のデザイナの手で完成されたからといって、前半を1人のデザイナが担当して後半を他のデザイナが担当するというわけではありません。むしろ、2人のデザイナが、プロセスの中でお互いに助言し合って進めています。これには密なコラボレーションが必要です。

プロセス

クライアントとしては、デザインプロセスの全てを知ることができれば、目指すものがイメージしやすいでしょう。重複する作業が多くなりがちですが、以下のチャートは、一般的なUXデザイナとUIデザイナの役割を分かりやすくまとめています。

UX-UI infographic

とにかくチームワーク

1つのプロジェクトでは、全てのプロセスを通して同じチームメンバーで仕事を続けることが、デザイナにとってもクライアントにとっても望ましいのは明らかです。(Lemberが扱う仕事の)多くの場合、UXデザイナはパートナーを組むUIデザイナが決まっています。それが同じ会社の人である場合は特にそうです。

しかし、予算やクライアントによっては時々、UIデザイナはクライアントによって決められてしまいます。このような場合、LemberはUXだけを完成させた状態でプロジェクトを受け渡さなくてはいけません。

Lemberは、UXは最初から最後まで全体を通して関わらなければならない仕事だと強調します。最初はビジネスの内容を確認する内容の質問から始まり、最後には制作物の 結果の検証や改善 を繰り返して仕上げていくのです。もし、UXデザイナがプロジェクトの 初期段階 にしか関われず、途中で助言をすることもできないとすると”大きな枠組み”でとらえた場合、プロジェクト全体で何かが欠けてしまう可能性があります。

プロジェクト全体にUXデザイナが関わるということは、プロジェクトの各フェーズをUXデザイナがリードするということではありません。例えばLemberは、クライアントの仕事の進め方や美学について知るため、社内デザイナと1週間一緒に仕事をさせてほしいと、クライアントに頼んだことがあります。

Lemberは、このような観察期間を設けるほうが、管理者とのミーティングをするよりも、より多くのことが分かるものだと言っています。デザインチームの運営について内部的な欠陥があることが、彼には分かっていたのです。このような新たな形のコラボレーションが可能になったことについて、チームは大歓迎しました。皆が全体を見渡せるようになったので、チーム全体が1つの目標に向かって進めました。

またLemberは、可能な時は実際にクライアントのオフィスに行き、責任者のすぐそばで、プロジェクトの約70%を過ごすのも役立つと言っています。もちろん、クライアントが大企業になればなるほど、これを実行するのは難しくなるでしょう。

更に彼は、友好的に振る舞う一方でおせっかいな行動はせず、クライアントのオフィスに学びに行っているのを忘れないことも重要だと言っています。結局のところ、このプロセスを実施すると、クライアントからすぐに話を聞ける状態を作ることができるだけではなく、透明性の確保ができてクライアントからの信頼を得られます。言うまでもありませんが、そうすることでクライアントとの関係性も、より迅速に改善されるのです。

弱点を知っておく(そうすれば、回避できる)

クライアントの立場であれ、デザイナの立場であれ、両者の関係において共通の弱みを知っておくことは、事前に弱点に気付いて問題を回避すること、またはそれを改善する鍵となります。Lemberによると、クライアントとの間で彼がよく直面する弱点がいくつかあるそうです。

  • プロダクトの目的と戦略を明確に定義していない。 もし企業が目的や戦略をきちんと定義できていないとしたら、UXデザインだけでは解決できない、内部の大きな問題が存在している可能性が大いにあります。
  • 抱えている問題を企業が挙げてこない。 どの企業にも問題はあるものです。問題があることを認め、その問題が何かを特定することができた時に、UXチームは問題解決に向けて集中できます。
  • 視野の狭い考え方をしている。 企業にはプロジェクトの完成形について凝り固まった考え方があるかもしれませんが、最終的には偏見にとらわれず、デザイナの提案に耳を傾け、デザイナの仕事を信頼するべきです。一方でLemberは、UXデザイナは信頼を得る努力をすべきだとも言っています。
  • プロジェクトリーダーがいない。 企業にプロジェクトリーダーがいないとしたら、デザイナにもリーダーがいないということになります。プロジェクトには必ず最終的な決断を下す人がいなければならず、そのような立場の人がいないとすると、そのプロジェクトは簡単にマンネリ化してしまうでしょう。
  • コミュニケーションをしていない。 Lemberは、UXデザイナとして行った仕事の大部分は、クライアントとのコミュニケーションにかかっていたと言っています。クライアントを知っていく段階においてクライアントに多くの質問を投げかけることは、UXデザイナの仕事の一部であり、質問を投げかけることでクライアントとの関係性も途切れずにいられます。この方法で、デザイナは迅速かつ効率的に仕事を進められるのです。

言いづらいことを率直に伝えるタイミングを知る

大変だとしても、クライアントが真実に向き合う手助けをしなければならない時がデザイナにはあると、Lemberは言っています。「デザイナはその仕事に対して報酬を得ている。あらゆるところで決断を下す場面があり(中略)集中力を保ち、言うべきことを先延ばしにしてはならない」とも言っています。

集中力を保つために必要なのは、クライアントに説明し自分のビジョンを守ることです。

クライアントが決断できない時は、大抵の場合、彼らがデザイナとしてのあなたを信頼していないか、あなたがプロジェクト管理者とコミュニケーションを取っていないかのどちらかだ。

クライアントの信頼を得られていない場合は、何よりも優先して信頼を得る努力をすべきです。その時は、穏やかに、プロフェッショナルな態度で、そしてそのクライアントとの案件に専念することによって、彼らの信頼を得るべきだと彼は言っています。

責任者と話ができていない場合は、まず直接その責任者と話せるように動きしましょう。もし無理だと言われたら、 「窓口の担当者に今の問題点を理解させ、その人に自分は味方であると伝えることだ」とLemberは言っています。

連絡を取るべき時を知る

クライアントのプロジェクトにおいてあなたがどのような仕事をしたか、またどれだけの労力を注いだかに関わらず、1年後くらいに再度そのサイトやアプリケーションを見て、自分のやったことが全て無駄になっていることが分かったら本当に最悪でしょう。

これは誰にでも起こり得ることです。Lemberにだって起こり得ます。もしそうなってしまったら、できることは2つです。誰でもいいからその時部屋にいる人に向かってクライアントの悪口を言いまくること。または、直接クライアントに出向くこと(できれば悪態はつかずに)。Lemberが勧めるのは当然後者です。

プロジェクトの完了後にクライアントに連絡を取ることは、スタジオの経営者としての責任だとLemberは言います。クライアントがデザインのとおりに開発を進めていなかった場合は特に連絡が必要です。それがクライアントと良好な(理想的な)関係を続けていくことにつながるのです。

Lemberがクライアントに送るメールは以下のようなものだそうです。

UX-UI infographic-2
しかしこれ以上に知っておくべきなのは、このような事態を全て回避できる方法があるということです。つまり、プロジェクトが周りと連携せずサイロ化してしまう状況を確実に防ぐことです。UXデザインからUIデザインのプロセスの大部分で、双方のデザイナの作業は重複します。彼らがお互い密にコミュニケーションを取れれば、それだけ完成したプロダクトは一貫性のあるものになり、クライアントは気に入るでしょうし、持続性も得られるでしょう。大切なのは、チーム一丸となって取り組むことなのです。

将来的にプロジェクトの内容が当初想定していたUXから離れていくと、戦略に基づいて構築したデザインが微妙に崩れてしまうとLemberは語っています。

クライアントはUXについて自分に直接何か言ってくることはせず、大抵はサービスの開始を急いでしまうのだそうです。Lemberいわく、こうして元のUXの方針からそれてしまうことは、デザインについて争って”同士討ち”をしているのも同然なのです。

前進し続ける方法を知る

クライアントはUXプロジェクトで自らが求めるものをきちんと認識しておかなければなりませんし、UXデザイナはクライアントのニーズを予測しなければなりません。そのためには、クライアントはコンバージョンレートや使いやすさという点でUXプロジェクトから何を得たいのかを考えることが有効です。その間に、UXデザイナはその業界の最新の動向をしっかり掴んでおきます。これは実際、想像以上に大変なことです。

何もせずにいる時間が長いと、すぐに置いていかれてしまいます。Lemberは言っています。「全てのことをよく見て理解しなくてはならない」と。

これは普段の生活の中だけでなく、リードマーケットの開発や新たなテクノロジについて調べたり読んだりする時にも言えることなのです。またLemberは、自分とは違う分野のクリエイティブな人々と共同で仕事をするのもいいと言っていました。あらゆる角度から物事をよりよく見るためです。

本当に、あらゆる角度から考えるというのが全てだと思います。ユーザとプロダクトのデザインとの関係から、デザイナとクライアントとの関係まで、きちんと調べて理解することと、最終的に目指すものをしっかり共有することが、プロジェクトが真っすぐ成功に向かう鍵となるのです。

監修者
監修者_古川陽介
古川陽介
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 グループマネジャー 株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 Node.js 日本ユーザーグループ代表
複合機メーカー、ゲーム会社を経て、2016年に株式会社リクルートテクノロジーズ(現リクルート)入社。 現在はAPソリューショングループのマネジャーとしてアプリ基盤の改善や運用、各種開発支援ツールの開発、またテックリードとしてエンジニアチームの支援や育成までを担う。 2019年より株式会社ニジボックスを兼務し、室長としてエンジニア育成基盤の設計、技術指南も遂行。 Node.js 日本ユーザーグループの代表を務め、Node学園祭などを主宰。