2014年6月17日
優れたロゴを作るには?
(2014-06-04)by Min Ming Lo
本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。
ブランドをデザインする時の6つの質問
企業のロゴは、ビジネスにおけるブランドイメージの重要な基盤となります。会社と顧客の最初のつながりであると言えるでしょう。効果的なロゴは、適切なトーンで正しく経営理念を表わすことができます。私は数年間、様々な事業のためにロゴ作りに携わってきました。ここに紹介する質問は、新しいロゴを生み出す時、いつも私が自分自身に問いかけているものです。
1. ロゴが連想させる感情はどのようなものか?
デザインのガイドラインの中で何よりも重要な基準となるのは、ロゴが会社の特色を反映しているかどうかということです。ロゴが連想させる感情は、会社の価値観にふさわしいものでなければいけません。例えば、Disneyのロゴは「幸せ」や「楽しさ」といった気持ちをイメージさせます。曲線の多い面白味のある書体は、子ども向けの漫画やアニメーションを手掛けてきた会社にふさわしいものです。しかし、これと似たようなスタイルを使って、セールスを目的とした会社のロゴを作ろうとするのは適切ではありません。
デザイナーは色が人にもたらす心理的な影響と、優れたロゴデザインに効果的な書体を知る必要があります。例えば、緑色は「成長」、「健康」、「自然」をイメージさせ、リラックスやリフレッシュという気持ちを高めます。一方で、赤色は「危険」や「情熱」といったものを連想させます。書体も同じことです。Garamond、Helvetica、Comic Sansなどの書体は、それぞれ異なる感情を引き起こします。Garamondのようなセリフ体は、「尊敬」や「伝統」という印象を与えるので、大学や新聞社など、誠実さが求められる分野により適しています。Helveticaのようなサンセリフ体は真新しさや近代的なイメージで、コンピュータやメディアに関わるハイテク業界向きです。Comic sansのようなカジュアルな書体は、玩具メーカーのように楽しく活発な企業には最適でしょう。色彩心理学や書体、ロゴの形状による影響を十分に理解することは、優れたロゴを作るためには欠かせない要素なのです。
Disneyロゴの愉快なスタイルは、楽しむことを狙いとしたデザインには最適ですが、マーケティングに関わる企業のロゴにはふさわしくありません。
2. ロゴから物語が感じとれるか?
すべての優れたロゴの背景には物語があります。
会社の商号を普通に貼り出してもステキなロゴとは言えません。出来合いのロゴを選ぶのが感心できないのはそのためです。月並みなロゴになるのを避けたいなら、意味のあるストーリーを感じさせることが大切です。優れたデザイナーはすぐにデザインを考え出すようなことはせず、まず企業の文化やビジョン、そして製品のトーンを理解しようとします。それでこそ企業の哲学と価値観が反映されたすばらしいロゴが完成するのです。
Amazonの矢印のマークはaからzまですべての商品を扱っていることを表しており、同時に商品を購入した顧客の笑顔も表しています。
3. 時を超えて生き残れるか?
2年、10年、20年と時が経過した時、あなたのロゴは人の目にどう映るでしょうか。デザイナーは数ヵ月で変わってしまうようなトレンドに振り回されてはいけません。極細のフォントや薄いシャドーなどの流行はおそらく、すぐに色あせて感じられるでしょう。シンプルなもののほうが複雑なものよりもはるかに良いのです。シンプルで記憶に残るロゴは、例え20年使い続けても時代遅れにはなりません。
試しに未発表のロゴをしばらく、あなたのそばに置いておきましょう。見れば見るほど愛着が湧き、あなたと共に変化していくように思えるロゴもあれば、しばらく経つと見るのも不快なほど嫌になるロゴもあることでしょう。もし数週間で飽きてしまうようなら、そのロゴに説得力や持続性は期待できません。
Apple社のロゴの極めてシンプルな輪郭と形は、時間が経過しても古びません。最初のプロトタイプのままでは今の時代にはまったくそぐわなかったでしょう。
4.ユニークで分かりやすいか?
すばらしいロゴというのは、特徴があり、印象的で、かつ分かりやすいものです。たった一度きりしか目にしていなくても、しばらく時間が経った後も覚えているはずです。
この点をチェックするには、自分の作ったロゴを友人に見せるのが良いでしょう。見せたらそれを隠してしまい、1週間後にどんなものだったか描写してもらうのです。ロゴのどの要素が人の記憶に強く残るかを知るには、新たな目で見ることがとても有効です。
また、もしロゴを見た時に別のロゴを思い出してしまったら、あまり独創性がないということですから、もっと他とは違う特徴を出すべきだということでしょう。
PathのロゴとPinterestのロゴは非常によく似ています。
5. 白黒で表示した時にどう見えるか?
ロゴのデザインに取り掛かかる時、私はいつも白黒で描き始めます。最初に色の制限を設けてデザインをすると、色に頼らず純粋に形や輪郭だけで分かるものを作らざるを得なくなります。良いロゴというのは、輪郭だけでも印象に残るものです。
また、ロゴを単色にすることで、媒体の材質や背景が異なる様々な用途に、容易に対応できるというメリットもあります。
右のナショナル ジオグラフィックのシンボルマークから、左のように黄色の色彩をなくしたら、何のマークだか認識するのはかなり難しくなりますね。
6.小さなサイズでも鮮明で分かりやすいか?
シンプルで認識されやすいロゴを作るもう1つの方法は、そのロゴを大幅に縮小してみることです。解像度がかなり低くても、良いロゴは一目見ただけでそれと分かります。必要以上にデザインを盛り込んで複雑にしすぎていないか、自分の作ったロゴをチェックするには良い方法です。
これらはすべて16×16ピクセルにした同じサイズのロゴです。Nike、マクドナルド、Twitter、WWFのロゴは小さいサイズでもすぐに認識できますね。これらに比べGEとスターバックスのロゴはかなりゴチャゴチャしているので、小さくなると何だか分かりにくくなってしまいます。
この6つは厳重なルールというわけではなく、効果的なロゴを作るためのガイドラインです。複雑であってもインパクトの強いロゴを作ることはできますが、それによって生じるデメリットを理解しておきましょう。今度ロゴのデザインや選定をする時は、この6つの質問を自分自身に投げかけてみてください。きっと最適なロゴの決定に役立つことと思います。
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