POSTD PRODUCED BY NIJIBOX

POSTD PRODUCED BY NIJIBOX

ニジボックスが運営する
エンジニアに向けた
キュレーションメディア

POSTD PRODUCED BY NIJIBOX

POSTD PRODUCED BY NIJIBOX

ニジボックスが運営する
エンジニアに向けた
キュレーションメディア

FeedlyRSSTwitterFacebook

本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。

何年にも渡り、私は相応量の製品戦略、ロードマップ、プロジェクトガントチャートを作成しました。しかし、もうこれらの資料を作ることはありません。以下に説明する優れた代替策を見つけたからです。
まず、以前のやり方はこちらです。


注釈:
戦略
ロードマップ
プロジェクトプラン
実行
アジャイル

このプランニング方式だと膨大な仕事が必要です。株主全員の同意を得るだけでも大変だと言うのにROIはかなり低くなります。プランはあっという間に現実と一致しなくなり、期間が長いほど、乖離も大きくなります。私の作ったすてきなロードマップやプロジェクトガントチャートが公開する時点で既に古くなっていると気づいたのは、少し経ってからでした。このプランニングもウォーターフォールのひとつなので(有名な ウォーターフォール・モデル とは異なります)、即応性はほとんど期待できません。トップで変更があると、それが波及しボトムでのプロジェクトのプランの練り直しや中止の原因となります。アジャイル開発はウォーターフォール・モデルに取り組みましたが、 プランニングのウォーターフォール は変えませんでした。そしてそれがイノベーションや文化に影響を与えました。ロードマップで資金を得られるのは数少ない大プロジェクトだけなので、前もって優先順位をつけ、可能性のある素晴らしいアイディアを捨てなければなりません。トップダウンの組織では管理者から出たアイディアが勝ち残ります。ボトムアップの組織でアイディアを通すのは、売り込み、販売、宣伝が必須の製品管理スキルとなっているため、非常に大変です。私にとっては全て20世紀中頃の話のように感じられます。

では、代替策とは何でしょう?

GIST

これは、私がGoogleに勤務している時に使い始め、リーンスタートアップとアジャイル開発の原則を基に、数年間に渡り使い続けたプランニングシステムです。多数の企業にGISTを紹介してきましたが、結果は一貫しています。変更プランに割く労力が減り、管理費の削減、チームの速度や自立性の改善、組織を超えた連携力の向上が生じ、最終的に製品とソリューションが良くなるのです。

このシステムは、主要な基本要素であるゴール(Goal)、アイディア(Idea)、ステップ・プロジェクト(Step-project)、タスク(Task)の頭文字を取ってGISTと呼ばれています。それぞれの計画期間や変更頻度が異なり、追跡には異なるツールを使用する場合もありますが、全ての企業やチームが関わる核となるプランニングは、必ず4つの基本要素を合わせて構成します。

システムの各パートについて詳細な記事を書くつもりです。以下はその概要です。

今後のワークショップ – リーン生産管理

6月7-8日、バルセロナ

2日間のワークショップで、 Jeff Gothelf (Sense & Respond(事実を把握し改善を図る)、リーンUX)と私が リーン製品管理 の原則とツールを段階的に説明し、現代の製品管理が、どのように企業の業績向上につながり、顧客の成功のために最適化されるのかを明らかにします。4月1日までの早割チケットは こちら から購入できます。

ゴール

人々に目的地のみを伝え、行き方を伝えなかったら、驚くべき結果が待っているだろう – George S. Patton

ほとんどの戦略プランが大罪を犯します。戦略プランはソリューション(技術Xを使用し、企業Yと提携して、Z国で発売する)を明示しますが、ゴールを示しません。現代の陸軍大将なら、これを後進的だと言うでしょう。軍では部隊に目標を与え、達成するための手段は任せます( 委託型指揮 の原則)。この方法は、現場に与える力が増え、必要な管理費が減り、段違いに安定します。ソリューションは現場の状況に応じて変化しますが、目標は変わりません。

ゴールが指針を具体化します。ゴールは会社の戦略を、望ましい結果(いつまでにどうなりたいか。どの状態になることで達成とするか)という観点から説明するものです。「なぜこのプロジェクトを実行しているのか?」と疑問を感じる人が組織内に現れても、必ずゴールが答えを与えてくれるはずです。Googleでは四半期ごとに「 目標と主な結果 (OKR)」の形式で会社のゴールについて細かく説明するため、私はゴールについてとても詳しくなりました。Googleの成功の理由のひとつがOKRだと信じている人もいます。


注釈:
* 目標:2018年末までに収益性を上げる
* 主な結果:5社以上の新規企業顧客
* 主な結果:解約率2.4%以下
* 目標:顧客に携帯上の製品を使用させる
* 主な結果:携帯MAU > 20,000
* 主な結果:携帯上での主要な行動を25%超が行う
* 目標:バグのない快適なユーザエクスペリエンス
* 主な結果:顧客から報告された問題の上位10項目を修正
* 主な結果:カスタマーサポートの応答時間を40%短縮

「目標と主な結果」形式のゴールの例

本稿のような記事をメールで受け取りたい場合は、 私のニュースレターに登録してください

アイディア

すばらしいアイディが欲しいなら、たくさんのアイディアを考えなければいけない。ほとんどのアイディアが使い物にならないだろう。学ぶべきはどのアイディアを捨てるべきかということだ – Linus Pauling

アイディアはゴールに到達する仮定上の方法を示しています。ここで重要な言葉は “仮定上” です。与えられた目標を達成するためのアイディアはたくさんあるでしょう。しかし、 肯定的な結果を生むアイディアは3分の1 以下です(格段に確率が低いことも多いです)。経験豊富なリーダー、製品管理者、設計者のアイディアも平均以上の成功率は得られません。

そのためGISTでは、前もってアイディアを排除したり、優先順位付けの死闘を繰り広げさせたり、管理者のアイディアをえこひいきしたり、最も派手に宣伝されるか、売り込まれるか、うまく駆け引きされたアイディア選んだりすることは絶対にありません。代わりに以下を行います。

  • アイディアバンクに全てのアイディアを集める。通常、アイディアバンクはスプレッドシートかデータベースの形式をとることが多い。全てのアイディアを歓迎するため、アイディアバンクは無制限に数百のアイディアを保持する場合もある。

  • 証拠 を用いて優先順位付けする。私はSean Ellisの ICE prioritization が好きですが、他にも多くの手法があります。

  • できるだけ多くのアイディアを優先度の高い順にテストする。これはステップ・プロジェクトの役割です。

ステップ・プロジェクト

志は大きく、スタートは小さく – [Googleのイノベーションを支える8本の柱](https://www.thinkwithgoogle.com/marketing-resources/8-pillars-of-innovation/)

有望なアイディアを選び、9~18ヵ月のプロジェクトにして実行したくなるものです。これはよくある間違いで、非常に大きな損害を生みます。ほとんどのアイディアは投資に値しないため、根拠のないアイディアに数期または数年をかけることは、大金を捨てることになるのです。

大規模なプロジェクトを始める代わりに、小規模なステップ・プロジェクトでアイディアを試します。各ステップ・プロジェクトの期間は10週以下で、1段階ずつ実行していきます。例:モックアップ→プロトタイプ→実用最小限の製品(MVP)→試験運用→ベータ版→販売

リーンスタートアップの“build(構築)-measure(測定)-learn(学習)”の原則に従うと、各ステップ・プロジェクトは、実際にはアイディアをテストする実験となります。うまく進んでいくと、アイディアの完全版により近い製品で、より多くのユーザに対し、より長い期間をかけて各ステップ・プロジェクトを行うことになります。


注釈:
プロジェクト開始
(上段 左→右)
モックアップ v1
モックアップ v2
ワーキングプロトタイプ
ラフバージョン
社内での試験運用
アルファ版
ベータ版
(上段 左→右)
ホールウェイテスト
ユーザテスト1
ユーザテスト2
主要チーム内での試験運用
試験運用テスト
アルファ版のモニター調査
ベータ版テスト
使用データ

ステップ・プロジェクトで構成された実際のプロジェクトの例

通常、完成品は最初に想定した製品より大幅に優れています(理由を説明は、 こちらの記事 をご覧ください)。

ステップ・プロジェクトはとても小規模なので、長期間のプロジェクトで生じる問題の影響を全て回避できます。少ない投資ですぐに結果が出るので、より多くのアイディアを並行してテストできるのです。売り込みや駆け引きは必要ありません。思いついたアイディアに命を吹きこみ、ほんの数週間でテストする能力は、関わる全ての人に自由と楽しみを与えます。再び長期間の過酷な労働を強いるプロジェクトに関わりたいとは、もう決して思わないでしょう。

タスク

最終的に、各ステップ・プロジェクトは“タスク”と呼ばれる非常に小さなアクティビティに分けられます。システムのこのパートは、アジャイル・プランニング・ツール、かんばん ボード、その他の最近の開発プロジェクト管理技術が非常によく適応します。このレベルでは何も変更する必要はありません。唯一の違いは、これより上の層も即応性を持ち変更する可能性があることです。

プランニングサイクル

GISTによるプランニングは多層で反復します。

  • ゴール は通常1年以上の期間で設定します。ここは長期的な思考を促したい部分です。ゴールは年始に定義し、四半期ごとに評価と調整を行います。古くなったゴールの追求は望みません。

  • アイディア は常に収集し優先順位付けします。新しいアイディアの探究をやめることは決してありません。

  • ステップ・プロジェクト は四半期の初めに定義します。チームはその四半期で達成したいゴールとアイディアを選び、それに応じてステップ・プロジェクトを決めます。四半期のステップ・プロジェクト・リスト(通常、スプレッドシートかデータベースツールで保存されている)は、プランニングを繰り返すタスクに合わせて1~2週間ごとに評価し、優先順位を付け直します。

  • タスク は、チームの好む開発方法(例えば、スクラムのスプリントプランニング)によって1~2週間ごとにプランニングを繰り返し、日々、調整を行います。


例えば上記のチームでは、2つのゴールに関連する4つのアイディアに同時に取り組んでいます。アイディア2は既にステップ1と2を成功させています。アイディア3は既に最初のステップ・プロジェクトを失敗しているため脱落させて、他の3つのアイディアにより多くの労力を注げるようにします。

まだロードマップが必要ですか?

もう必要ないはずです。通常、ロードマップは以下の目的で使われます。

  • ワークプランニング – 願わくは、ここまでの説明で要らないと思ってほしいですし、この目的でロードマップは不要です。

  • 社内コミュニケーション – 私の経験では、同僚も役員も、ゴール、アイディア、ステップ・プロジェクトなどの言語をすぐに理解して受け入れます。難しい移行ではありませんし、現実主義と信頼性を正しく評価しています。当然、全体のプランニングシステムは社員全員と役員に対し、可視化するべきです。

  • 外部コミュニケーション – “正式なロードマップ”を最も期待するのは、顧客や提携先でしょう。機能から根底にあるニーズへと議論を変えるのは、いつもと同じように私たちの役目です。GISTなら答えを与えられます。例えばこんな具合です。「第3四半期の終わりまでにインプロダクト・コラボレーションを扱うことがゴールです。どのように実現するかはまだ名言できません。数多くのアイディアを検討し、即応性を維持していますが、第2四半期の終わりまでにMVPを作るつもりです。初期段階の試験者となってフィードバックしてもらえませんか?」運が良ければ、どんなロードマップよりも効果的に働くでしょう。

最後の説明

GISTは革命的な新しい考えではありません。どちらかといえば、ここ数年間のアイディアと手法を融合させたものですが、別々にすることもよくあります。GISTはプランニングの山の全ての層に取り組もうと試み、生きた変更プランを作り出します。

主要な原則

  • アイディア出し、プランニング、実行が分裂しない。常にすべてが同時に生じる。

  • ソリューションや漠然とした戦略的声明ではなくゴール。

  • プロダクトバックログではなくアイディアバンク。

  • 数四半期もしくは数年に渡る長期プロジェクトではなく、数週間で終わる短いステップ・プロジェクト。

  • 実装までに長い時間のかかる少数の大きなアイディアだけに賭けない。多くのアイディアを迅速にテストし、使えるものを追求する。

  • 反復。プランの各パートを定期的に体系的に見直し、全てのレベルにおいて即応性を維持する。

監修者
監修者_古川陽介
古川陽介
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 グループマネジャー 株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 Node.js 日本ユーザーグループ代表
複合機メーカー、ゲーム会社を経て、2016年に株式会社リクルートテクノロジーズ(現リクルート)入社。 現在はAPソリューショングループのマネジャーとしてアプリ基盤の改善や運用、各種開発支援ツールの開発、またテックリードとしてエンジニアチームの支援や育成までを担う。 2019年より株式会社ニジボックスを兼務し、室長としてエンジニア育成基盤の設計、技術指南も遂行。 Node.js 日本ユーザーグループの代表を務め、Node学園祭などを主宰。