2022年9月12日
変化するフロントエンドエンジニアの役割。「モダンフロントエンド」開発組織のつくりかた
POSTD読者の皆さんはじめまして、本メディアでキュレーターを担当させていただいている古川陽介と申します。 株式会社ニジボックスでデベロップメント室室長を務める他、株式会社リクルートでプロダクト開発部署のマネージャーも兼務しています。 また、Japan Node.js Associationの代表理事として、Node.js の普及を目指す活動なども行っています。
私が普段の仕事や活動の中で強く感じているのは、フロントエンドエンジニアの役割が大きな変換点を迎えているということです。 端的に表現するとスマートフォンの登場をきっかけとしたデバイスの多様化によって、フロントエンドエンジニアの領域が拡大したと言うことになると思います。
パフォーマンスや開発の生産性を著しく上昇させる、ReactやVueを駆使したモダンフロントエンド開発と、それを実現するための組織構築は、今後のサービスやプロダクト開発において、ビジネスを加速させる上で欠かせないものだと考えています。 この記事では、主に開発組織の構築に焦点をあてて、私たちエンジニアがこれから進むべき道について考察していきたいと思います。
私がエンジニアの組織作りに興味を持ったきっかけ
キャリアの中で初めてマネジメントをすることになった2017年、私は大いに悩んでいました。
リクルートでエンジニア組織のマネージャーとなり、最初は本当に右も左も分からない状態でした。 「マネージャーとして何をすればよいのか?」「どうメンバーを育成していけばよいのか?」そんな悩みが尽きない日々を送っていたのです。
そんなある日、一冊の本に出会います。 株式会社レクター取締役の広木大地さんが著した『エンジニアリング組織論への招待』。 この本には、まさに当時の私が求めていた「どうエンジニアを成長させるか」「どうエンジニア組織を作るか」「不確実性に対応するための組織設計」といった、私の問いに対する答えが明解に記されていたのです。 この本を何度も繰り返し読み込むにつれ、組織作りの奥深さ、面白さに強く惹かれるようになりました。
同時期さらにもう1つ、組織作りに興味を持つきっかけとなる出会いがありました。 株式会社一休CTOの伊藤直也さんです。 彼は、CTOという立場ながら今でも現役バリバリでコードを書いていて、かつ組織作りも並行し、ビジネスの拡大を目的として事業を進めていくスーパーマンです。 理想的なマネジメントのスタイルとして彼に憧れを抱くとともに、強い開発組織を志す想いが自分の中で高まっていくのを感じていました。
##メンバーが成長を遂げ、大規模カンファレンスに登壇した日
手探りでマネジメントや組織作りに取り組む中で、また広木大地さんの書籍や伊藤直也さんのスタイルに影響を受け、そのエッセンスを取り入れながら試行錯誤してきたことで、徐々に結果が出てくるようになりました。
結果が出てくると、ますます「組織」というものに対する興味が強くなります。 それにさらに拍車をかけたのが、「メンバーの成長」を目の当たりにした瞬間です。
入社当時は、まだエンジニアとしておぼつかなかったあるメンバーが、数年後、グループ全体の大規模カンファレンスに登壇したことがあります。 数万人を超えるグループ従業員の中から登壇者として選ばれるのはたったの数人。 彼の成長をずっとそばで見てきた私にとって、これほど嬉しいことはありませんでした。 彼がカンファレンスに登壇した日、仲間の成長という、私がそれまでに体験したことのない喜びを感じました。
また、チーム内の誰かのポジティブな行動や実績に対して、「次は私も挑戦してみよう」といった化学反応が生まれることもあります。 その化学反応によって、チームや組織はさらに強くなっていくと思います。 組織が強くなれば、新しく人が集まることもありますし、会社の成長にもつながります。 このようなダイナミズムは、組織作りの醍醐味と言えるでしょう。
【10/1(土)開催】モダンフロントエンド×組織論がテーマのオンラインイベント「Post Dev」
繰り返しになりますが、私の実体験からも「開発組織」は今後の重要なキーワードになると考えています。 モダンフロントエンド技術と開発組織の成長。 この2つの要素がうまくクロスオーバーすることで、エンジニアはさらに進化し、ビジネスが加速すると確信しています。
そんな、フロントエンドの未来に向けたヒントをより多くの方と共有したいという想いで、この度2022/10/1(土)に「Post Dev」というオンラインイベントを開催する運びとなりました。
私が大きな影響を受けた伊藤直也さん、広木大地さんをはじめ、国内外のエキスパートを登壇者としてお招きしています。 例えば、「State Of JavaScript」(JavaScriptの現状調査)で知られるSacha GreifさんからはJavaScriptの最新トレンドと今後の展望を、MicrosoftのTomomi ImuraさんからはVS Code開発を、ICSの池田泰延さんからはCSSの最新トレンドを語っていただく予定です。 ※イベント詳細はこちらのページをご覧ください。
今回イベントを企画するにあたって、技術的な話と組織という2つのテーマをあえて掛け合わせました。 コンテンツを全て見ていただくと、「今」と「これからすべきこと」が全体像として把握いただけるように設計しています。 「フロントエンドの新たなる可能性」を今後皆さんと一緒に追求していけるような機会となると良いなと思っています。
これからのエンジニアがやるべき“2種類のアウトプット”
最後に、一エンジニアという視点に立って、その役割が変化する時代においてやるべき“2種類のアウトプット”というお話で締めくくりたいと思います。
1つ目は、プロダクト開発そのものを意味するアウトプットです。 皆さんやっていることだとは思いますが、デバイスやサービスの多様化・複雑化に対応するため、継続的に技術を日々磨いていくことはとても大切だと考えています。 また、技術の追求はエンジニアごとのユニークな価値がもっとも発揮される行為だと思います。 ぜひ、ご自身を信頼し知的好奇心の誘うままに「道」を極めていただきたいです。
そしてもう1つは、ご自分が追求してきた体験に基づいたストーリーを言語化し、外へ発信する意味でのアウトプットです。 自らの試みをアウトプットすることによって、コミュニティー全体の研究水準が上がり、最終的に業界全体の技術進歩にもつながっていくと思います。 また、発表者の観点としても、技術への理解がより深められるメリットも見逃せません。 私自身、多くのイベント・カンファレンスへの登壇や記事の執筆を通して、技術面での成長も実感しています。
アウトプットをするためには、インプットが必要です。 ぜひ、今回の「POST Dev」でも良質なインプットをしてください。 きっと、私が一冊の本によって受けた雷のような衝撃を、尊敬すべきエキスパートたちとの出会いから生まれた高揚感を、皆さんも体験できるはずです。