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Ryan (LawnStarter)

本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。

最近、大学2年の学生からスタートアップで働くのと、大企業に就職することの違いについて質問のメールをもらいました。期間は短いのですが私は両方とも経験しているので、いくつかの質問にできる限り答えることにしました。

なるべく客観的な視点を持つことを心がけるようにしましたが、私自身、そうするのに適した立場にあると思っています。まれなケースかもしれませんが、私は スタートアップであるLawnStarter の一員となって素晴らしい経験をする前に、アメリカのビジネス界でも最高の体験をしました。

この記事を投稿する目的は2つあります。1つ目は、スタートアップと大企業で働くことの違いを知りたい人たちに私の考えを伝えること。2つ目は、スタートアップと大企業、両方で働いたことのある人たちから意見を聞き、どんなことを考えているのか知ることです。

この記事を書くにあたり、スタートアップを”従業員が15人以下の急成長している企業”と定義します。人からよく聞かれるから定義するのであって、スタートアップの規模を示したいわけではありません。

Q. スタートアップでキャリアを積むことはできますか?

A. 答えは、もちろん”イエス”です。優良なスタートアップであれば、そこで様々なことを学んで実力を試され、重大な責任も問われることになります。多岐にわたる仕事をこなさなければならず、ゼロから覚えることも出てくるでしょう。

もちろんキャリアを積む上で、あなたが何を望むかによります。ヘッジファンドマネジャーか外科医になりたいのであれば、スタートアップは良いとっかかりとは言えないかもしれません。しかし、あなたが起業やビジネスにおける成功を望んだり、ソフトウェア開発に携わったりしたいなら、スタートアップはもってこいです。

Q. スタートアップのリスクマネジメントの手法は? 大企業は様々な構成要素で成り立っていて、イレギュラーなことへの対策も充実しています。何か起きた時、スタートアップのビジネスに打撃を与えないのでしょうか?

A. スタートアップの場合、不測の事態によって支障が出ることはほとんどありません。事業が頓挫するとしたら、資金が底を突いた時でしょう。通常これは予測できることですし、大体いつ頃起きるのか見通すこともできます。

統計的に大企業より、事業が失敗する可能性の高い会社に入るのはリスキーに思えますよね。最悪の場合、勤め先が廃業に追い込まれて職を失うことがありますが、それくらいどうにでもなることです。新たに仕事を見つけて、そこで実績を積めばいいのです。さらには勤務先の創業者がまともであれば、彼らのコネを使ってすぐ次の職にありつけるでしょう。

Q. 週にスタートアップに費やす時間は、どれくらいですか?

A. スタートアップは激務だと言われますが、個人的にはそうは思いません。過去に聞いた話を参考にすると、平均して週50時間労働といったところでしょうか。現在のアメリカのビジネス界では一般的と言えます。当然のことながらスタートアップでは、自ら行動しない限り、代わりにやってくれる人がいない場合があるので、時間外労働が必要になってきます。

時間をかけて人一倍努力していると評価してくれる会社を選ぶことが重要だと思います。また、スタートアップでは、職場で忙しそうにしていることより仕事を片づけることの方が大切だと思います。大企業に勤めている多くの人々は、忙しくなくても忙しそうにしていることを期待されているので、長時間働いているようなそぶりを見せます。それに対し、ほとんどのスタートアップは、結果を重視していて、仕事をしている自分がどう見えるかは気にしません。
もちろん、これは会社によって様々でしょう。例えば、私が働いていた大企業では、職場で仕事をしている時間は重視されていませんでした。どんな会社に入っても、勤務時間に関することについて自分と同じレベルの人々と話をするべきです。

Q. 小規模の会社と取り引きしていると、より大きな影響を与えられるようになるのでしょうか?

A. 比例してそうなります。大企業に勤めている場合に比べて会社の将来により大きな影響を与えられるようになります。断言することはできませんが、大企業にいたら、大抵はプロジェクトに関わる数人のうちの1人にすぎません。プロジェクトが財務会計のようにハッキリとした影響をほとんど及ぼさないこともあれば、1,000億円規模の戦略的な意思決定が下されることもあります。スタートアップでは、自分で大きなプロジェクトを手掛けることになるので、ほとんどの場合、責任重大です。

Q. 自分はもっと大きな影響を与えたいと強く望むような人間か、それともむしろ大きな意思決定をせずに傍観するような人間か、どちらのタイプでしょうか?

A. とにかくやる気があるなら、影響を与えたいと思うでしょう。普通の仕事をしている仲間からよく聞く不満は、勤務時間や食堂の食べ物、社内での駆け引きに関することではありません。自分の仕事が重要だと思えないということなのです。だから、取るに足りない仕事だと不満を感じているなら、答えは”イエス”です。影響を与えたいと思っているのです。実際、もし影響を与えることができないのなら、仕事が嫌になるでしょう。

Q. スタートアップで働くのは、もっと大きな企業で働くよりストレスがたまるでしょうか?

A. そうかもしれません。何とも言えませんが、会社次第です。しかし、私が言えるのは、大企業に勤めていた頃、ストレスの多くは、形式的な煩雑な手続きや、適切なITシステムを利用できないこと、義務的な研修などが原因だったということです。スタートアップでは、大企業で働いていたら遭遇するようなこういったつまらないことにストレスを感じることは少ないと思われます。ストレスを感じているとしたら、それはビジネスに影響するような現実的な締め切りがあるからでしょう。

もちろん、ひどい上司や同僚がいてストレスを感じているなら、どこにいようと、すぐに辞めるべきです。

1つ忠告しておきたいのは、多くの起業家やスタートアップで働く人間は、”オンとオフ”の切り替えが難しいということです。大企業に勤めている時は、入浴中や家にいる時、運転中など、ちょっとした時間に、仕事のことを考えることが多かったのですが、オンオフの切り替えはうまくいっていました。しかし、いまの事業、LawnStarterで働くようになってからは、夢にまで芝生の刈り入れについて出てくることがあります。ここまで仕事のことが常に頭を占めるようになったのは、スタートアップの責任の重さと、やりがいのなせる業だと思っています。

Q. 周囲(友人や家族)は自分のキャリア設計をどう見るでしょうか?

A. 月並みな回答になりますが、周囲の人間がどう思っているかは、心配する必要はありません。とはいえ、現実的にいえば、やはり他人の意見は気になるところですよね。

親というものは、自分の子供に手堅い道を進んで欲しいと常に望んでいるものでしょう。リスクを負ってほしくないからです。しかしスタートアップはどうしてもリスキーに見えるでしょう。さらに親の世代というのは、考え方からして違います。一般的に親たちベビーブーム世代は手堅い職につき、地道に出世しながら、郊外に一戸建てを買い、快適な老後を過ごすことをよしとして育てられてきました。
ですが言ってしまえば、親というのは子供が幸せであることこそが、自分たちの幸せであるのです。ですから、周囲からどう思われるかを心配するよりも、自分が何をしたいのかをよく考えてみてください。

あなたの友人がアメリカビジネス界でのいわゆる大企業に勤めているのなら、きっとうらやましがられるでしょう。

Q. 今後のキャリアのために、まずは大企業で経験を積んだ方がいいでしょうか?

A. あけすけに言えば、名の知れた大企業に勤続した経歴は大きなアドバンテージになるでしょう。しかしそれだけでは十分ではありません。GoogleやGoldman Sachs、あるいはMckinseyといった一握りの大企業であれば、そこで働いたという事実が価値を持つのは確かでしょうが、ほとんどの場合、企業のネームバリューだけでは、大した影響力を持ちません。

私はアメリカ人なら誰もが耳にしたことのある大企業で働いたことがあります。とても素晴らしい企業でした。しかしそれでもまだ、私の職歴に太鼓判を押してくれるまでには至りませんでした。他社でジョブインタビューを受けた際、そこで聞かれたのは、前の企業で私がどんな役割を果たし、どんな影響を与え、それがどう価値ある経験につながったか説明せよということでした。スタートアップでも同様のことが求められるでしょう。勤めてきた企業の名前ではなく、実績と経験がものを言うのです。

ウォール街の大手企業に勤めている友人いわく(ウォール街は企業のネームブランドや伝統ある企業を過大評価することで悪名高いところです)9割は、大企業でありきたりなインターンシップを受けてきた人材より、スタートアップで有意義なインターンシップを経験してきた人材を採用すると言っていました。

最後に質問です。あなたにとって重要なのは、ネームブランドですか?それともやりがいのある仕事ですか?

監修者
監修者_古川陽介
古川陽介
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 グループマネジャー 株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 Node.js 日本ユーザーグループ代表
複合機メーカー、ゲーム会社を経て、2016年に株式会社リクルートテクノロジーズ(現リクルート)入社。 現在はAPソリューショングループのマネジャーとしてアプリ基盤の改善や運用、各種開発支援ツールの開発、またテックリードとしてエンジニアチームの支援や育成までを担う。 2019年より株式会社ニジボックスを兼務し、室長としてエンジニア育成基盤の設計、技術指南も遂行。 Node.js 日本ユーザーグループの代表を務め、Node学園祭などを主宰。