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Nathan Marz

本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。

2012年1月12日、私は、Airbnbのテックトークシリーズで Storm に関する講演をすべく、Airbnbに赴きました。これは、公開イベントだったため大多数の観衆が参加していました。このようなイベントではよくあることですが、トークイベントの後で人々が談話や交流を楽しんでいました。私に近寄ってきた多数の人々の中に、 Jake Klamka 氏がいました。

Jake Klamka氏の第一印象は、彼がちょっと控えめな人だということもあり、これといったものがありませんでした。そのようなわけで、私の講演後に彼が近寄ってきた時、驚くほど素晴らしい起業家との出会いが待っているなんて知る由もなかったのです――そう、他者の援助を受ける達人ともいうべき人と。それから数年間にわたって、少しずつではありますが、私は彼に徐々に大きな援助をするようになったのです。そして、いかに素晴らしい会社をKlamka氏が創立したのかということに驚嘆することになるのです。

人々は様々な要望を持って私に近づいてきますが、その大部分は間違ったやり方をしています。たとえば、全く面識のない人から、1時間ほどの面談や電話会議をしてほしいというメールがよく送信されてきますが、その面談や電話会議をしたいという理由が、「Stormについてもっと知りたい」や「ビッグデータの扱いについてアドバイスをしてほしい」というように、例によってぼんやりとしたものです。以前にはこのようなミーティングをしたこともあったのですが、いつもといっていいほど、私にも相手にもただ時間のムダとなりました。このような人々は、ちょっとグーグル検索をしたり、私のブログを読んだり、私の講演を聞きに来れば簡単に答えが見つかるような、ありきたりな質問をしてきたのです。もちろん、私には人を助けたいという気持ちはありますが、ちょっとしたリサーチをするだけで答えが見つかるような質問をされることは非生産的なものなのです。

Jakeは援助の受け方をよく心得ています。私が身につけた他人からの援助の受け方は、Jakeに援助するよう徐々におびき寄せられてきた経験から身につけたものです。Airbnbの会合で近づいてきた時、彼自身が何に着手していて、私から何を求めているのかということには一切触れませんでした。それとは反対に、私について質問をし、私が何をしているのかと尋ねてきました。また、私の業績をしばらく見守ってきていること、そして、買収活動後のTwitterでの仕事はどうか(私はその半年前にTwitterに買収された BackType に関与していました)、 私がどうやってStormを創立したのかといった質問をしてきましたが、一切自分自身に話題を振ろうとはしませんでした。Jakeはかしこい奴です。

当然ながら、大いに興味をもっていることをアピールして私に取り入ってくるこの人物について、私はもっと知りたいと思わざるをえなくなりました。なので、私は彼に何をしていてどんなことに取り組んでいるのかと尋ねました。そうすると、彼はスラスラとY Combinatorにどのように取り組んできたのか、そして今は新しいものに取り組んでいるということも話してくれました。また、物理学、数学、その他データ サイエンティストになるために必要なバックグラウンド、スキルを持ったPhDを養成するフェローシップ プログラム(これは後ほどJakeが Insight Data Science と名づけたものです)のアイディアについても話してくれました。このアイディアは、PhDは、よい就職先に恵まれずあぶれている非常に頭のいい人々であると同時に、業界には非常に大きく、満たされていないデータ サイエンティストへの需要があったということです。PhDはデータ サイエンスに必要な統計学的なスキルを持っているため、業界でのツールについて教えこむことだけで十分なのです。Jakeの売り込みは非常にスムースなもので、私はかなり面白いアイディアだね、と答えました。

あらためて考えてみると、彼が私に近づいてきた時には、もうこのアイディアを売り込み、私の関心を測り、このプログラムに私からの支援が得られるかといったことを全て準備をしてきたのだと思います。しかし、ここでの重要な点は、彼が自分自身を私に押し付けてこなかったということです。私に近づき売り込みを始めるかわりに、自然なソーシャル ダイナミクスを活用し、私が彼について質問するまで売り込むのを待ちました。そして、私が彼のアイディアが気に入ったということを伝えるまで、彼は何が欲しいのかを言いませんでした。

Jakeは、彼のInsightの計画に対する私の考えを聞きにTwitterにランチをしにきてもいいかと聞いてきました。そのリクエストは些細なものであり、また、(私の職場に来てくれるという)私に最大限便宜を図ってくれたものでした。どこのだれとも知らない人からの1時間の面談リクエストとは違い、興味深いことをやっていることを示し、明確なフィードバックを求めていた人からのリクエストだったので、私は心を動かされ、喜んで面談することにしました。

JakeはTwitterのオフィスに、完全武装してランチしにやってきました。スライド資料を入れたiPadを手にInsightの仕組みや、学生の求人方法、そして求人した学生と業界をどうやって結びつけるのかといった詳細をわかりやすく説明してくれました。全てを具体的にすることで、非常にたやすくフィードバックをすることができました。私は、学生を業界のニーズに結びつけ続けることが非常に重要だからこそ、初期から企業をこのプログラムに関与させることが重要だと伝えました。この面談は非常に生産的なもので、私はたくさんの価値を与えられたと思いました。また、Jakeに感心したため、将来的に、もっと喜んで支援させてもらうということをはっきりと伝えました。

それから数ヶ月の間、私は、Twitter社内でこのプログラムから学生を雇うことに興味を持っていそうな人とJakeを結びつけることを中心に、いくつかの支援をしました。その年の夏、Jakeはプログラムの第一陣を発足させ、私にパロ アルトで学生たちに講演をしてくれないかと依頼してきました。私は喜んで依頼を受けました。

講演はうまく行き、プログラムの第一弾は大きな成功を収めました。Insightはフェローの100%の就職率を達成し、今も達成し続けています。フェローはNetflix、Twitter、Facebook、LinkedIn、Square、Microsoft等を始めとする業界トップ企業に雇用されています。これは本当に素晴らしいプログラムです。このプログラムの最も驚異的なところは、フェローには無料でサービスが提供されるということです。

それからの1年半は、Jakeとたまに連絡を取り合いました。そして、今年の2月、プログラムの最新情報を知らせるメールをくれ、(プログラムが大きく成長していました)彼の新しい data engineering
program
のアイディアについて相談できないかと言ってきました。データ サイエンスとは違い、このプログラムは、潜在的なデータ商品とデータ サイエンティストが使用するインフラストラクチャとのパイプラインを作りたい人々向けのプログラムというものです。Jakeは私が住むサンフランシスコの近くで面談することで、いつものように私に最大限の便宜を図ってくれました。

最初話を聞いた時は、懐疑的でした。データ サイエンスのプログラムの場合には、余剰している頭の良いPhDとデータ サイエンティスト不足という紛れもない不均衡を活用したものでしたが、データ エンジニアリングについてはそのターゲットについてよくわからなかったのです。しかし、話をしていくうちに、データ エンジニアリングがどんなに素晴らしいアイディアなのかということがわかりました。データ エンジニアリングの需要は大きく、そのスキルを得ることで、高給を貰えるだけでなく、この上なく面白い仕事に就けるということなのです。Twitter、Netflix、SpotifyやKhan Academyのデータセットを弄るところを想像してみてください。今日では誰もがビッグデータの問題を抱えているようであり、データ エンジニアこそがその問題の解決に必要不可欠なのです。

その他にも、このプログラムが業界での仕事への近道というだけでなく、Insight 自体にも価値があるということがはっきりとしました。Jakeはいわば、クリエイティビティの発祥地を作り上げたのです。プログラムはその全体が自主的なプロジェクトに携わり、助け合いお互いを高めているフェローを中心として構築されています。データ エンジニアリング プログラムは、新卒・キャリアを変えたいという経験者のいずれにかかわらず、のあらゆるプログラマーが各自のスキルを磨き、ものすごい仕事に就くことのできる素晴らしい機会に思えました。

面談の中で、Jakeの最大の質問は、データ エンジニアリング プログラムのフェローに適任なのはどのような人なのかということでした。6週間という期間では、プログラマー以外の人や経験の少ないプログラマーを、優秀なプログラマーに養成することはできないので、フェロー候補者は、すでに優秀なプログラマーをターゲットにすべきだということを私は強く思っていました。プログラムでは、フェローに基本的なエンジニアリング スキルではなく、データ エンジニアリングのツールやテクニックを習得させることに集中すべきなのです。この点が、このプログラムとデータ サイエンスプログラムとの最大の違いでした。私たちは長時間をかけて、 Insight Data
Engineering
の面接プロセスの仕組みについて話し合いました。

数週間後、Jakeは私にInsightの公式なアドバイザーになってくれないかと言ってきました。私は即座に受諾しました。というのも、Insightに非常に感銘を受けており、またJake自身がいかに才覚に優れ、効率的なのかということを照明してみせていたからです。
最も重要なのは、面談を必ず生産的なものにしてくれ、具体的なフィードバックを依頼し、絶対に不明確すぎる質問をしないJakeとの作業がいつも楽しいものだったからです。プログラムのアドバイザーとして、私はフェローのプロジェクトの支援をし、データ エンジニアリングに対する様々な側面( Lambda
Architecture

Storm のようなもの)についてフェローに教えるという研究会を開いていました。将来的にもっと多くの学生のグループを採用することで、プログラムがさらに良いものになり、進化していくのが楽しみです。

Jakeがどうやって私をおびき寄せてInsightの支援をさせたのかを思い出すのは楽しいです。Jakeは単に自分のやりたいことリストを携えてを店に来たのではなく、彼自身と彼が何をしていたのかということに関心持たせました。その後、私の職場でのランチ ミーティングから始まり、紹介、そしてInsightのオフィスへの訪問、そして候補者の評価、そしてフェローと時間を過ごすという定期的なコミットメントというように私に依頼するコミットメントを徐々に上げていったのです。Jakeはそれぞれの段階で、コミットメントを引き受けるにあたり、それがただの頼みではなく、私が楽しめ、十分に興味を持っていることを確認していました。それこそがJakeを素晴らしい起業家にさせているのです。彼は、赤の他人だった人をわざわざ彼を支援させたくなる、そんな人なのです。私がそうしたように、誰もがJakeの例から学ぶことができると思います。