2014年10月21日
デジタルノマドの旅で僕が学んだこと
(2014-08-25)by Noel Tock
本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。
変化、インフラ、旅行、道具、宿泊施設などなど
この記事では、iPhoneのVSCO Camで撮った写真を交えながら、僕がこの1年を通して学んだ実用的なノマドのテクニックをいくつか紹介します。最近デジタルノマドに関する議論が盛んになっていますが、デジタルノマドという肩書きは今から数年後にはありふれたものになっているでしょう。それまでの間、僕たちのコミュニティの経験から多くのことを皆さんとシェアしていきたいと思います。今回は僕の話を聞いてください。
注:この記事は旅行全般を論じたものではありません。旅行保険、お金の処理、マイレージサービス、現地でまかり通っている習慣への対応、時差ボケ、外国語の学習、珍しい屋台フードなどについては、すでに他のところで存分に語られています。
今年はじめての旅-フランス、パリ(写真: Manual Schmalstieg )
一度に1つずつ変える。 ノマドライフは日常に目まぐるしい変化をもたらします。もしノマドの道に進みたいなら、その他の変化はコントロールする必要があるでしょう。各地を転々とするからといって、自分の責任から逃れられるわけではありません。
自分が何に対してボスになるのか分かりもせずに「自分で自分のボスになる」などと言わないでください。旅行中は一貫して(いい意味で)気が散ることが多いですし、安定したインフラを探すのも大変です。場所を移動するのに合わせて、自分の仕事まで大きく変わるようなことがあってはいけません。たとえ最終的にはどうなるか分からないとしても、自分の進む方向性に対するしっかしたビジョンを持つことが大切です。
実用的なことを言えば、収入を生み出す方法は、綿密かつ確立されたものであるべきです。僕は常に移動しているので、メモ帳では役不足です。そこで、 Trello の2つのボードを使って仕事とプライベート両方のタスクを管理するようにしました。このアプリは今のところオフラインで使用できませんが、 それに対する取り組みはされています 。どこにいても自分の生活サイクルを維持し、すぐ実行できるようにするためには、メールにただ反応するだけでなく、仕事をするためのシステムを整える必要があります。
オーストラリア、バイロンベイ( Instagram )
旅は身軽に。 この12カ月で飛行機に45回乗った結果、荷物を預けている余裕はないと分かりました。言うまでもなく、機内持ち込みに徹しなければなりません。
典型的なデジタルノマドは、太陽が降り注ぐ暖かい場所を好む(と信じられています)。あなたにもその傾向があるなら、数枚のTシャツ、短パン、ビーチサンダル、そして仕事道具以外は持っていく必要がありません。入浴グッズ、日焼け止めなどその他の必需品は現地で調達、またはシェアできます。
質が良くて使い勝手のいい物を自信を持って買いましょう。値段がいつもクオリティに反映されるとは限りません。 Luminox の時計は海中やビーチで活躍しますし、 Gilletteの”肌にやさしい”刃 は、シェービングクリームがない時にも使えます。また、 Skross World Travel Adapter にはまだ期待を裏切られたことがありません。
機内持ち込みの手荷物は、重量オーバーしがちです(重量制限が厳しくなり、今では7~8キロが一般的です)。すぐに取り出せる補助的なバッグを用意しましょう。僕はあらかじめ全ての仕事道具を 巾着型のバッグ にしまって、持ち込み荷物の中に入れておきます。機内の荷物棚の辺りで自分の荷物をゴソゴソと手探りするのは嫌ですからね。機内持ち込みのスーツケースはすぐに傷んでしまうので、頑丈な TUMI や Samsonite がオススメです。
イギリス、ロンドン( Instagram )
インフラの完備。 インフラはインターネットと同義ではありません。もしあなたがノートパソコンを持って休暇に出かけることをデジタルノマドだと考えているとしたら、インフラを完備する必要性を本当に理解することはできないでしょう。誰でも自分の生活サイクルがありますし、ほとんどの場合、ほんの少しだって自分の大切なことを犠牲にする必要はありません。しかし、きちんと計画しなければ、必然的に日々の習慣を守れなくなり、結果として仕事に影響が及ぶことになります。
バックパックを背負ってユースホステルに泊まるような旅をするなら、仕事のダウンタイムが生じやすいでしょう。フリーランスで仕事をするなら、自分の時間を有効に使うための設備が整えられる程度の出費をすべきです。僕の場合は、信頼できるWi-Fiとキッチン、洗濯設備、そしてスポーツジムとまともな食料品店が近くにあることが重要です。以前から自分の周りに揃っていたものを諦めないためには、以前よりも綿密な計画を立てなければなりません。
タイ、プーケットタウンのナイトマーケット( Instagram )
運動。 特に短い旅行の場合は、夜に出歩く機会が増えて運動を全くしないという状況に陥りやすいものです。僕もそうなったことがありますが、今ではうまく対応できるようになりました。ポイントはジムに通うことだけに固執せず、個別の用具も活用することです。ランニングや水泳の他に、 自重エクササイズ や、 TRX を使ったカーディオエクササイズ(どちらのエクササイズもスマートフォンで利用できるアプリがたくさんあります)もできます。TRXの唯一の難点は、重量が1キロ近くあることです。
どんな種類のエクササイズをするにしても、一緒にやる仲間がいればやる気も出るし、成果も上がります。コワーキングスペースやサーフィンのクラスなどで知り合った人たちを誘ったり、チームを組んだりしましょう。
もしジム通いが趣味なら(僕もジムに行くのが好きです)、どの施設でも日割り料金で利用できるはずです。さらに、自分の滞在期間に応じた交渉も可能です。中途半端な日数の場合は、交渉した方がいいでしょう(1カ月料金で6週間利用するなど)。旅行中だからといって、自分の日課を中断する必要はありません。
タイランド湾上空を飛行するガラ空きのAirbus( Instagram )
宿泊施設。 僕は施設に関する不確定要素を最小限にしたいので、大抵はAirbnb(家屋/アパート)を使います。簡潔明快な宿泊施設のリストに複数の利用者のレビューがついていて、宿泊施設に関する不安を軽減できます。慣れない環境では他にも大変なことがたくさんあるのですから、現地到着前に対応できることは賢くやっておきましょう。
Airbnbで宿泊施設の交渉をする際、ノマドに有利な点が2つあります。
まず、Airbnbの利用者の平均的な滞在期間は 3日から7日間 だということを念頭に置いておきましょう。その中で30日以上滞在するゲストは、宿泊施設を提供するホストにとって非常にありがたい存在になります。ゲストが長期滞在してくれれば、ホストは、管理業務(例えば、メッセージのやり取りや部屋の案内など)にかける時間を節約できる上に、不必要なダウンタイム(つまり、空室状態)を回避できます。
次に、Airbnbの利用者は平均して 宿泊日の30日前に予約している ということも覚えておいてください。そうした中で、宿泊日のわずか2、3日前に予約するゲストが現れれば、空室を抱えたホストにとっては土壇場で収入を得るチャンスになります。このような駆け込み予約にAirbnbが対応してくれている限り、今後も多くのホストが値段交渉に応じてくれるでしょう。
ホストから良いレビューをもらえると、優良ゲストとして信頼され、交渉の余地も広がります。
それから、ノマドであることとは関係ありませんが、3つ目の裏技があります。それは、自分の直感を信じて、レビューが1件も書き込まれていない宿泊施設にアタックする方法です。その際、ポジティブなレビューを書くとホストに約束すれば、宿泊代を割引きしてもらえる可能性があります。
もちろんこの方法がいつも計算通りにうまくいくとは限りません。通常の予約でも(1週間の宿泊を1カ月前に予約する場合)、宿泊代を割引きしてもらえるか問い合わせるだけで10パーセントほど安く泊まれます。しかし、この裏技を使うと、20パーセントから50パーセントも値引きしてくれることがあります。
ブルックリン橋――アメリカ、ニューヨーク市( Instagram )
仕事環境について。 マルチスクリーンやエルゴノミクス・チェア、エルゴノミック・キーボード、サラウンド音響、その他様々なガジェット。旅に出る際は、そうしたお気に入りのグッズに囲まれた快適な仕事環境とはサヨナラしなければなりません。しかし、うっかりしていましたが、マウスとヘッドフォンに関してはどこにでも持って行けますね。僕はいつもヘッドフォンを3つ持って旅に出かけます。 Appleの一般的なタイプ と、 RHAのインイヤー型 、そして SonyのMDR-1RNC です。仕事を効率よく進める上で、周囲のノイズを遮断することは僕にとって不可欠です。ちなみにSpotifyでは こんなプレイリスト を作って聴いています。@philip_arthurさんの プレイリスト もいいですね。プレミアム会員になれば、オフラインでも音楽を視聴できますよ。
滞在先には、ほとんどの場合、液晶テレビが備え付けられているはずです。これをセカンドモニタとして利用しない手はありません。HDMI端子の付いたケーブル(上の写真のような製品)を用意しておけば、どこに行っても大画面モニタをセットアップできます。
どこで仕事をするかについてですが、僕がオフィス代わりに重宝しているのは、最近あちこちで増えているコワーキングスペースです。コワーキングスペースには、 ShareDest や、 desksurfing など、様々なサービスがあります。この記事を書いている今も、グラン・カナリア島の The Surf Office を利用しています。The Surf Officeは、ヨーロッパでサーフィンを楽しみながら仕事をしたい人には絶対にオススメです。カフェで仕事をするのもいいですが、コワーキングスペースとは環境が全然違います。個人的な感覚ですが、オフィス用ではないスペースで作業をすると、生産性が3分の1くらい落ちるような気がしています。さっきも言ったように、不確定要素はできる限り前もって排除しておきましょう。
行き当たりばったりでワークスペースを探して結局スターバックスに行き着くのであれば、元も子もありませんからね。
Airbnbの宿泊施設からーーオーストラリア、マンリービーチ ( Instagram )
一時停止ボタンを押す。 ノマドにとっての旅行は休暇ではありません。しかし、慌てることなく落ち着いて仕事をするには、時間がたっぷり必要です。そうでなければ、ノマドになる意味なんてないですよね?
僕がノマドライフを送るようになったのは全くの偶然で、それまでは出張旅行を何度も繰り返していました。そうした旅行は必然的に短期間のものが多く、長くても1週間や2週間程度で、日帰りのケースもありました。これでは、腰を据えてゆっくり考え事をする時間なんて作れません。この段階まで来たら、仕事を片付けるだけで精一杯になってしまいます。自分は忙しい人間だと認識するようになればもう終わりです。証拠が必要ですか? それならば、旅行をしている間、 Rescue Time を使って自分の仕事状況を分析してみてください。
どんな場所でも、その界隈を自分の足で歩き回り、そのエリアについて知り尽くそうと思えば、そこに少なくとも4週間から6週間は滞在しなければなりません。しかし、僕が今利用しているThe Surf Officeのような進化型のコワーキングスペース(宿泊場所やアクティビティーも用意されたコワーキングスペース)に泊まれば、そうした手間が省けます。また、同じ目的や目標を共有しているのであれば、グループで旅行してもいいでしょう。似たような効果が得られるはずです。
エル・コティーリョ――カナリア諸島、フエルテベントゥラ島( Instagram )
オフライン環境に備える。 旅先でオフラインになることは絶対に避けられません。しかも頻繁に起こります。しかし、ちょっとした備えがあれば、そうした問題を軽減できます。例えば、低価格の3G対応SIMカードやドングル型の通信機を用意しておくといいでしょう(ちなみに、スペインに毎年数カ月滞在するのであれば、年間契約にした方がお得です)。
しかしそれでも、完全にオフラインになってしまうことがあり得ます(決して悪いことではありません。むしろ良いことです)。そういう場合僕は、場所を移動する前に以下のことをやっておきます。
- 現在のGitHubリポジトリにある全てのデータをアクティブブランチ用に引き出しておく。
- ReadKitまたはPocketを同期しておく。
- Kindleで最後に読んだページを端末間で同期しておく(MacBook AirとiPhoneの両方を使って1度に2、3冊の本を並行して読むのが僕の好みです。Kindle端末自体は持っていません)。
ただし、東ヨーロッパに行くのであれば、この点は無視してください(無料で利用できるWi-Fiスポットがあちこちにありますから)。また、オーストラリアでネットに接続しようと思えば、お金と忍耐力が必要なのであしからず。
最近は、充電に使える電源コンセントが空港や機内に増えていますし、ノートパソコンのバッテリー駆動時間も長くなっています。そのおかげで、電力不足は以前ほど問題にならなくなりました。MacBook Airの13インチモデルであれば、最大12時間もバッテリーが持続します(ただし、Vagrantなどの電力消費の激しいサービスは停止しておかなければなりません)。
それから、携帯電話用の外付けバッテリーがあると便利ですよ。でも、少し重いのでご注意ください(余裕で0.5キロはあるでしょう)。
ノルウェー、トリシル( Instagram )
人とつながる。 旅の目的が何であれ、他のノマドや旅行者と交流する時間を作るようにしましょう。彼らの話や旅行テクニック、物の考え方にはいつも驚かされます。デジタルノマドという肩書きは(グロースハッカーと同じく)単なるハッタリのようなものですが、人気のハッシュタグ(#digitalnomad)1つで簡単に仲間を探すことができます。さらに、ノマドのための会合(ベルリンで行われる DNX )も開かれていますし、ノマドたちをアグリゲートするコミュニティ( Nomad Project )も作られています。
カナリア諸島の次はどこに行くのかって? 予定ではこんな感じです。→スイス、チューリッヒ→ブルガリア、ソフィア→イギリス、ロンドン→アメリカ、サンフランシスコ→アメリカ、ラスベガス→未定(バリ島かタイ)。いつでもご連絡を。
パンガー湾――タイ、プーケット周辺( Instagram )
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