2014年7月18日
スタートアップ向け法務の完全入門ガイド
本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。
スタートアップ創業者は、きっとデザインやエンジニアリング、セールスといったことに優れているはずです。しかし、法律に関することとなると、ほとんど何も分かっていないのではないでしょうか。そのため、特に創業当初に非常に多くの法的な間違いがあっても驚くにはあたりません。
これが、弁護士以外の人間でもスタートアップの法務面を整備し維持できるようにと、私がこの解説シリーズをはじめた理由です。
私の経験からすると、法的な間違いを避けることは簡単で、それほど費用もかかりません。もちろんそれに関する多くの解説がありますが、個人的に好きではありません。たいていのものは複雑すぎて、構造化されておらず、明確な基準が欠けています。
私は、何か法的なサービスを売り込もうとしているわけではありません。ITスタートアップ(ソフトウェア、ハードウェア含む)の法的側面の基本を説明しようとしているだけです。私の見るところ、弁護士に依頼できるくらいの資金を得るまでは、そういった基本は十分役に立つものです。私は個人的に法律顧問として8年間の経験があり、現在はIT企業で法律担当役員の地位についています。しかし私はスタートアップ (Staply) もしています。したがって私は自分自身の経験を共有し、様々な法的問題に対処する方法を示すことができます。
次の大きなテーマについて解説したいと思います。創業者契約書、知的財産、NDA (秘密保持契約)、条件概要書、雇用契約、プライバシーポリシー、利用条件など。
スタートアップは、少なくとも初期段階では、たいていアメリカやヨーロッパ市場をターゲットにしているため、文書の個々の条項を説明する際には、アメリカ (カリフォルニア州) とイギリスの法律を使うことにします。各文書の記述・条項の解説の中にそれらに関する私のコメントを入れることにします。
興味をお持ちの場合は、このブログをご自由に購読してください。また何か疑問をお持ちであれば、アドバイスも喜んでさせていただきます。
それでは始めましょう。
創業者契約書(Founders Agreement): CEOの責任
スタートアップにおける主な文書の1つは、創業者間の契約「創業者契約書」です。一切の業務開始前にすべての創業者がこの契約書に署名することが非常に重要です。これは主に、創業者のうちの誰かが会社を離れることを決断したときや、十分な働きをしないときに生じる問題を避けるためのものです。
創業者契約書にまず記載すべきことは、CEOの選任と責任です。創業者全員で各創業者の責任事項を検討し、CEO (最高経営責任者) を選任する必要があります。通常、CEOにはスタートアップの当初のコンセプト (理念) を考案した人間がなりますが、これはスタートアップにより様々です。
スタートアップCEOに典型的な責任は、次のようなものです。
- 会社の短期的・長期的なグローバル戦略の策定
- 投資家、スポンサーとの関係の確立と維持
- 資本金が既に調達されている場合、投資家に対する会社の現状報告や、会社の新たな戦略の策定または現在の戦略の修正
- 製品販売の組織化および管理
- マーケティング戦略の策定および実行
- 創業者や従業員に対する法的サポートの実施
- 事業計画の策定。これには、マイルストーン、キャッシュフロー、製品のビジョンおよび説明、損益分岐点分析、SWOT分析、競合企業の分析といったものが含まれます。
- 従業員の雇用や解雇
- 創業者の解雇
最後の点 が非常に重要です。なぜなら何もしないのに会社から離れようとしない創業者など必要でないからです。そのため各創業者向けのKPI (主要業績評価指標) を策定し同意しておく必要があります。または、ごくまれなケースですが、CEOに創業者を解雇する権限を与えておくことができます。これについては、後ほど別の解説で述べたいと思います。
創業者契約書のひな形をどこで入手することができますか?
Docstocのサービスが非常に気に入っています。15~20ドルを支払えば、そこから創業者契約書を含め、ほとんどすべての種類の文書をダウンロードすることができます。Docstocでは、この契約書のひな形は「設立前創業者合意書」という名称です。例えば、[このひな形]
(http://premium.docstoc.com/docs/116862688/FOUNDERS-AGREEMENT-sample-1) が非常にすぐれています。しかし私の意見では、Docstocには非常に具体的な創業者契約書のひな形や例しかありません。私もいずれ自分でひな形を作って、皆さんと共有したいと思います。
Staplyの経験
Staplyでは、業務開始の直前に創業者契約書の署名を行いました。私の会社では、創業者は2人でした。グレッグと私です。私たちが1年前に最初のプロジェクトを始めたときに、ごく短い (私たち向けの) 創業者契約書を準備していました。だから、Staplyを始める前に、既にあった契約書を修正し、2人で署名しました。
私たちの契約書におけるCEOの責任は、次のようなものです。
- ソフトウェア開発および管理。ソフトウェアにはウェブ、デスクトップおよびモバイルアプリケーションが含まれる。
- タスク管理
- 事業計画の策定
- 従業員の雇用および解雇
- グループ会社の組織計画 (法人間の相互関係、資本の所在、知的財産の所在、個々の法的主体の仕事に係る条件)
- マーケティング戦略の策定および実行
- 投資家やメディアとの関係構築および維持
- 潜在的パートナーシップの調査および特定
- 法的文書の策定、管理
- 知的財産の管理 – 新たな発明の特定、世界的な知的財産の執行および保護戦略の策定、知的財産に関連する問題に関する外部の代理人や弁護士との対応
- 予算の管理
私がCEOになるが、グレッグを解雇する権限を持たないことにも同意しました。その代り、私たちはKPIと受給権に同意しました。これらのテーマを議論するときには、当社の数字を出したいと思います。
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