POSTD PRODUCED BY NIJIBOX

POSTD PRODUCED BY NIJIBOX

ニジボックスが運営する
エンジニアに向けた
キュレーションメディア

本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。

(注:2017/04/27、いただいたフィードバックを元に翻訳を修正いたしました。)

この記事では、皆さん(特にC言語のプログラマ)に「自分はCを分かっていなかった」と気付いてもらうことを目標にしています。

Cの落とし穴は、思っているよりもずっと身近なところにあります。ちょっとしたコードにも 未定義の動作 が潜んでいることを以下で示しましょう。

この記事はQ&A形式になっており、それぞれの例題は独立したソースコードとして扱ってください。

1.

int i;
int i = 10;

Q: これは正しいコードでしょうか? (変数の二重定義エラーが発生するでしょうか。上述の通り、これは独立したソースファイルであり、関数本体や複合ステートメントの一部ではありません)

解答

A: 正しいコードです。1行目は仮定義であり、2行目でコンパイラが処理した後に “定義” になります。

2.

extern void bar(void);
void foo(int *x)
{
  int y = *x;  /* (1) */
  if(!x)       /* (2) */
  {
    return;    /* (3) */
  }
  bar();
  return;
}

Q: がNULLポインタであっても bar() が呼び出されました(プログラムはクラッシュしません)。これはオプティマイザのエラーでしょうか。それとも何も問題はないのでしょうか?

解答

A: 何も問題はありません。もし x がNULLポインタなら、1行目の未定義の動作が発生するので、プログラマには何も保証されません。つまり、この1行目でプログラムがクラッシュするとは限りませんし、2行目でプログラムが制御を返すとも限りません。コンパイラが従う一連の処理ルールについても説明しましょう。まず、コンパイラでは1行目を解析します。そして x がNULLポインタになり得ないことを確認すると、2行目と3行目の実行されないコードを削除します。変数 y は未使用なので削除されます。また、 *x 型はvolatile型修飾子とは見なされないため、メモリから読み取られた値も削除されます。

このようにして、未使用の変数によってNULLポインタのチェックが取り除かれます。

3.

以下の関数があるとしましょう。

#define ZP_COUNT 10
void func_original(int *xp, int *yp, int *zp)
{
  int i;
  for(i = 0; i < ZP_COUNT; i++)
  {
    *zp++ = *xp + *yp;
  }
}

これを次のように最適化します。

void func_optimized(int *xp, int *yp, int *zp)
{
  int tmp = *xp + *yp;
  int i;
  for(i = 0; i < ZP_COUNT; i++)
  {
    *zp++ = tmp;
  }
}

Q: 元の関数と最適化した関数を呼び出して、 zp で異なる結果を得ることはできるでしょうか?

解答

A: yp == zp とすると可能です。

4.

double f(double x)
{
  assert(x != 0.);
  return 1. / x;
}

Q: この関数で inf が返されることはあるでしょうか? 浮動小数点数は(ほとんどのマシンで)IEEE 754に従って実装されており、 assert が有効(NDEBUGは未定義)であると仮定します。

解答

A: はい、あります。1e-309などの非正規化した値を x に渡せば十分です。

5.

int my_strlen(const char *x)
{
  int res = 0;
  while(*x)
  {
    res++;
    x++;
  }
  return res;
}

Q: 上記の関数は、ヌル(文字)で終わる行の長さを返す必要があります。バグはどこでしょうか?

解答

A: オブジェクトのサイズを格納するために int 型を使用することは間違っています。なぜならintがオブジェクトのサイズを格納できるという保証はないからです。 size_t を使うべきでしょう。

6.

#include <stdio.h>
#include <string.h>
int main(){
  const char *str = "hello";
  size_t length = strlen(str);
  size_t i;
  for(i = length - 1; i >= 0; i--)
  {
    putchar(str[i]);
  }
  putchar('\n');
  return 0;
}

Q: 上記のコードは無限ループになります。なぜでしょうか?

解答

A: size_t は符号なしのデータ型です。 i も符号なしなので、 i >= 0 が常にTRUE(真)となるため、上記は無限ループになります。

7.

#include <stdio.h>
void f(int *i, long *l){
  printf("1. v=%ld\n", *l); /* (1) */
  *i = 11;                  /* (2) */
  printf("2. v=%ld\n", *l); /* (3) */
}
int main(){
  long a = 10;
  f((int *) &a, &a);
  printf("3. v=%ld\n", a);
  return 0;
}

このプログラムを2つの異なるコンパイラにかけて、リトルエンディアンのマシンで実行しました。すると、次の通り実行結果が一致しませんでした。

1.v=10    2. v=11    3. v=11
1.v=10    2. v=10    3. v=11

Q: 2番目の結果が得られる理由を説明してください。

解答

A: 上記のプログラムは未定義の動作となります。例えば、エイリアス(別名)の厳格な規則に違反しているためです。コードの2行目で int の値を変更していますね。すると、 long の値は変わらないと仮定することができます(互換性のないデータ型を持つ別のポインタのエイリアスは、逆参照できません)。従ってコンパイラは、1行目を実行して読み取った値をそのまま、3行目の long へ渡します。

8.

#include <stdio.h>
int main(){
  int array[] = { 0, 1, 2 };
  printf("%d %d %d\n", 10, (5, array[1, 2]), 10);
}

Q: このコードは正しいですか? 未定義の動作ではないとすると、print文で何が出力されるでしょうか?

解答

A: はい、正しいです。ここではコンマ演算子が使われていますね。まず、コンマの左側の引数が計算されて廃棄されます。次に、右側の引数が計算されて、演算子全体の処理結果として使われます。出力結果は「 10 2 10 」となります。

ここで、関数呼び出しにもコンマ記号が使われることに注意してください(例えば f(a(), b()) )。これはコンマ演算子ではありません。従って関数呼び出しの場合は、計算の順序は保証されません。 a()b() は任意の順序で呼び出されます。

9.

unsigned int add(unsigned int a, unsigned int b){
  return a + b;
}

Q: add(UINT_MAX, 1) の実行結果はどうなりますか?

解答

A: 符号なしの数値のオーバーフローが定義されていますね。これは 2^(CHAR_BIT * sizeof(unsigned int)) で計算されます。結果は0となります。

10.

int add(int a, int b)
{
  return a + b;
}

Q: では、 add(INT_MAX, 1) の実行結果はどうなるでしょうか?

解答

A: 符号付きの数値がオーバーフローするので、未定義の動作となります。

11.

int neg(int a)
{
  return -a;
}

Q: このコードは、未定義の動作となるでしょうか?仮にそうだとすれば、どの引数でそれが起こるでしょうか?

解答

A: neg(INT_MIN) です。ECMが追加コード(2の補数)で負の値を表す場合、 INT_MIN の絶対値は INT_MAX の絶対値よりも大きく、その差は1となります。この場合、 -INT_MIN が符号付きのオーバーフローとなるため、未定義の動作になります。

12.

int div(int a, int b){
  assert(b != 0);
  return a / b;
}

Q: このコードは、未定義の動作となりますか?仮にそうだとすれば、どの引数でそれが起こるでしょうか?

解答

A: ECMが追加コードで負の値を表す場合、 div(INT_MIN, -1) で未定義の動作となります。理由については、直前の質問の解答を参照してください。

— Dmitri Gribenko gribozavr@gmail.com


この作品は クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植ライセンス の下に提供されています。