プログラマとしてのキャリアを脅かす反復運動過多損傷の痛みをどう解消したか

タイピング時に痛みを感じつつ、プログラマとして働き続けるのは非常に辛いことでしょう。音声認識という代替手段はあっても、やはりタイピングとは勝手が違います。新しい仕事を始めてすぐに手首と腕の痛みがぶり返した時、私は恐怖感すら覚えました。

私は過去に2度、こうした状況に陥ったことがあります。その時は痛みが消えるまで結局何年もの間、プログラミングなしの生活を余儀なくされました。そのため、またプログラマとしてのキャリアが脅かされるのでは、と不安に感じていました。

そんなある日、仕事場へと自転車をこいでいる最中に、私は何が起きているのかに気付いたのです。そして自らの理論を検証する手段を思い付き、それを実行に移すと、痛みは消え去りました。同じ対策を何年か前にも講じていれば、きっと痛みは解消していたはずです。しかし実際は、プログラミングができたはずの数年間を、嫌々プロダクト・マネジャとして働いて過ごしていました。

私が気付いた内容をお伝えする前に、まずは事前に試したことを紹介しておきましょう。

失敗した対策 その1:優れた製品を選び、使いやすさを追求し、十分な休憩をとる

私は初めて文字が打てないほどの手首の痛みに襲われた時に、まずキーボードを Kinesis Advantageという優れた製品に変えました。値段は高いのですが、くぼみがあって、非常に良くデザインされたキーボードです。Ctrl、Alt、Space、Enterキーが親指の位置に配置されているため、手をそれほど広げる必要がありません。

Emacsユーザには、ありがたいデザインです。今では、普通のキーボードは数分以上使えません。Kinesis製のキーボードを何台も所有し、それらを手放せなくなっているのです。このキーボードのおかげで、指の伸ばし過ぎで生じていた一種の痛みが解消されたとみて間違いないでしょう。

また、人間工学の観点から使い勝手の良い机を用意し(立ち机を使うようにしました)、タイピング中に休憩時間を設けました。数分間ごとに30秒、1時間ごとに10分間の休憩をとっていましたが、その効果のほどは不明です。

痛みが押し寄せては去り、最終的には慢性的な痛みへと変わってしまいました。

失敗した対策 その2:医師の指示

病院に行ったところ、私の症状は「ナントカ炎」という何やら痛そうなラテン語の名前がついた炎症の一種だろうと言われました。ただ、はっきりとした原因は特定できませんでした。そして、非ステロイド系の抗炎症薬(高用量のイブプロフェンで痛みを抑える薬)を処方され、作業療法を受けるよう言われたのです。

薬を飲んでいる間は痛みが和らいだものの、結局はどちらも解決策とはなりませんでした。

失敗した対策 その3:その他の理学療法

次に試したのはマッサージやヨガ、アレクサンダー・テクニーク、ロルフィングです。これにより、筋肉が硬直して痛みが生じていることに気付き、最終的には姿勢を改善する方法をいくつか学ぶことができました。アレクサンダー・テクニークのレッスンでは、背中全体の緊張が一気にほぐれる驚くべき感覚を何度か味わいました。それまでの筋肉の使い方には、どこか問題があったようです。

とても有用な知識を習得できました。以前はよく手が冷たくなっていたのですが、レッスンを受けたことで、筋肉を正しくリラックスさせれば手がすぐに温かくなるということに気付きました。以前は筋肉が緊張して、血の巡りが悪くなっていたようです。

しかし結果的には、どれも痛みの解消にはつながりませんでした。

諦める

半年間、自宅でタイピングをせずに過ごしても、痛みは改善しませんでした。

そこで私は職場に復帰し、プロダクト・アナリストという新しい役職につきました。以前よりタイピングの量が少なくて済み、音声入力で文字を入力することもできます。この仕事を数年間続けたのですが、満足感は得られませんでした。私は、やはりプログラミングがしたかったのです。

パートタイムで働く

この仕事をしている時期にSarno博士のある本を読みました。彼の見解によると、長期的な痛みは実際にケガをしているわけではなく、むしろ精神的な問題から来る筋肉の緊張や、血行が悪いなどが原因であるというのです。実際に博士の本を1冊読んだり、メンタルエクササイズを行ったりして、痛みが消えたと言う人が多くいます。

私も試しにやってみることにしました。精神的なストレスを解き放ってプログラミングの仕事を再開し、もう痛みを心配することをやめました。まだ、フルタイムで働ける自信はなかったので、まずコンサルの仕事をやり、のちにプログラミングの仕事をパートタイムで始めたのです。

効果がありました! 再びタイピングをすることができたのです。しかもその後4年間も痛みを感じませんでした。

痛みの再発

しかし今年、別の仕事を始めたばかりの頃でした。フルタイムより仕事量は少なめですが、これまでよりは長い時間働くようになりました。そうしたら痛みが再発したのです。

なんでまた苦しまなきゃいけないんでしょうか。そんなに長時間働いていたわけではありません。この4年間使っていた同じ立ち机から変えてもいません。何が起こったのでしょうか?

ひらめき:環境的要因

自転車で仕事に向かっているある日、突然ひらめきました。Sarno博士の見解は、抑圧されている精神的なストレスによる筋肉の緊張や、血行の悪さを痛みの原因とするものでした。少なくとも、私のケースではそれが当てはまっていました。しかし、精神的なストレスだけを解消しても、筋肉の緊張や血流の悪さを和らげることはできないのです。

私が新しく働き始めたオフィスはおかしいくらい冷えていました。しかも、2週間前には私のデスクがエアコンの吹き出し口のすぐ下に移動になりました。冷えは間違いなく血流を悪くします。同じく、カフェインは血管を収縮させる原因となります。パートタイムで仕事をしていた、痛みのなかった4年間は、基本的にエアコンのないハッカースペースで仕事をしていたのです。

そこで私はトレーナーを着て、カイロを身に着け、オフィスに行く日にはカフェインを控えるようにしました。すると、痛みが消えました。そしてそれから一度も痛みを感じていません。

私は3年間、プログラマとして仕事をすることができませんでしたが、その間も温かい格好をするという単純な方法で問題を解決できた可能性はあったわけです。

学んだこと

もし手首や腕に痛みを覚えたら、以下を試してみてください。
1. まずはトレーナーを着てみましょう。体を温めるということだけで、問題が全て片付くかもしれません。
2. Emacsキーがあなたの手首に合わないようなら、viやgod-modeやSpacemacsなども検討してみてください。高価にはなりますが、Kinesis Advantageのキーボードという選択肢もあります。
3. 次に、姿勢の改善を心がけてください。(姿勢には、立ち机が効果的です)
4. 最後に、上記を改善し1~2カ月が経過しても痛みが改善されない場合は、Sarno博士の本を読んでみてください(更新:このブログを投稿してから、「あの本を読んだら痛みがあっという間に消えました」というメールを何通もいただきました)。

これがあらゆる人に効果があるとは限りませんが、「反復運動過多損傷」と呼ばれる症状の多くは、実際のケガではないと私は信じています。痛みを感じても諦めないことです。必ず、再びタイピングできるようになります。

ところで、私のキャリアにおける失敗は、自分の腕の痛みの理由を探るのに長い時間を要してしまったことだけが原因ではありません。ですから、優秀なソフトウェア・エンジニアになりたかったら、私の記事「私が犯した多くの間違えをプログラマとして避ける方法」もぜひお読みください。