邪魔をしないでください

こんな経験はありませんか? あなたはデスクに向かい、この一週間仕事を滞らせ続けている1つの問題を解決するため、考えを巡らせています。頭の奥底で、他の誰もが思いつかないようなアイデアや可能性を構築している最中です。識別した概念の数々を積み重ねたり、ひっくり返したり、引っ張ってみたり、またはすき間に入れてみたりします。あと少しで、時代を超えて立ち続けるような強靭な石のアーチが出来上がります。しかし、まだ完成していないそのアーチは、あなたが手を離してしまえば途端に崩れ落ちてしまいそうです。

Keystone of the Monumental Arch, Palmyra
パルミラ遺跡にある記念門の“かなめ石” © Verity Cridland/flickr

同僚があなたに気付きました。あなたは口を半開きにさせ、頭をかしげ、片方の目を引きつらせ、まるで毒虫でも吸い込んでしまったかのような様相をしています(こんなの僕だけ?)。明らかに作業中ではないその姿を見て、同僚はあなたの肩を叩き、こう言います。「ちょっと君の意見を聞かせてもらってもいいかな? 実はこの件なんだけど…」

その瞬間、あなたが懸命に築き上げようとしていたその偉大なアーチは、未完成のまま、音を立てて崩れ落ちてしまうのです。

このような出来事を、人生における数々の腹立たしい出来事と同じように、人のせいにしてしまうことは簡単です。人というのは、得てして腹立たしい生き物ですから。しかし実際には、コミュニケーション不足と、そして人が慣れ親しむ仕事のタイプが全く異なる2つのものに分類されるということが原因である、とも考えられるのです。ですから(善意に基づき、とでも言っておきます)、起こり得るいくつかの可能性を検討してみることにしましょう。

2つのタイプ

私が知る限り、最初にその2つのタイプに仕事を分類したのは、プログラマでありエッセイストでもあるPaul Grahamです。1つ目のタイプは、彼によると、少しの間(または1時間、1日)中断しても、何も失うことなく再開が可能であるような仕事のことを言います。例えば、木製のブロックを積み上げて単純なピラミッドを作ることが、このタイプに当たります(子供時代が懐かしくなったでしょう)。ピラミッドを作っている途中で誰かに話しかけられたとしても、中断することは簡単です。持っているブロックを置き、その場を離れて数分の会話をしている間も、作りかけのピラミッドはそこにとどまり、戻ってきて作業を再開した時にも何の問題も起きていません。

Top Ten Blocks
積み上げブロック © rweait-osm/flickr

このタイプの仕事に慣れている人たちは、同僚にアイデアを求められれば作業を中断し、力になろうとします。彼らにとって30秒間の中断は、30秒間の損失でしかありません。仲間のためなら、たったの30秒を惜しむ人なんていませんよね?

翻訳あり
© Uri Bram

しかし2つ目のタイプは、全く異なるものです。このタイプは言わば、アーチを作るような仕事です。もし一瞬でも手を止めてしまえば、その大半が崩れてしまうかもしれません。あなたが時間をかけて積み重ねてきた知識、例えばアーチの丈夫な箇所と弱い箇所に関する情報や、どのブロックをどこに置くかといったアイデアが、失われてしまいます。つまり、30秒間の中断が、30秒間以上の大きな損失となってしまう場合があるということです。こういった、邪魔をしてほしくない仕事においては、たった1つの、ほんの一瞬の中断が、生産性をいとも簡単に半減させてしまうのです。

具体的な違い

極端な話に聞こえますか? むしろ信じられないでしょうか。それでは、この話を理論づけるために、(少しだけ)数学的なお話をすることにしましょう。(数学だからって逃げないでください、聞く価値のある話ですから)

邪魔が気にならない仕事というのは、費やした時間と生産性が比例するような仕事であるとも考えられるでしょう。つまり、仕事に2時間費やせば、2時間分の成果を得る、ということです。このような比例タイプの仕事においては、2時間連続して仕事をしても、1時間ずつ別々のタイミングで仕事をしても、どちらでも変わりはありません。なぜなら、1+1=2、だからです。(計算、合っていますか? チェックしていただいてもいいですよ)

そう考えると、一方の邪魔をしてほしくない仕事がどういうものかということも分かりやすくなると思います。邪魔をしてほしくない仕事というのは、費やした時間と生産性が単純には比例しないような仕事です。例えば(いろいろなケースがあるのですが)、時間の長さではなく時間の面積に伴って生産性が上がるような仕事の場合、連続した2時間の仕事は2×2=4、面積にして4単位分の生産性となります。しかし中断が入ったことにより1時間ずつに分断されてしまうと、それぞれが1×1=1、足して2単位分の生産性にしかなりません。たった30秒間の中断が、生産性に大きな違いを生むのです。

翻訳あります
© Uri Bram

邪魔をしてほしくない人について、Grahamはこう言っています。「提出書類の記入漏れがあったことで人事部から電話がかかってくるなどの邪魔は、非常に大きな損失になり得ます。コンピューターマニアがあなたの質問に答えるために、パソコンのモニターから目を離し、悪意に満ちた目をあなたに向ける理由がこれです。彼らの頭の中では、大きな家がグラグラしている状態なのです」。

ドアからドアへ

すでにお話したように、邪魔が気にならない仕事に慣れている人と、邪魔をしてほしくない仕事に慣れている人との間には、ある単純な誤解があります。そのことで、職場の中に多くの衝突が生まれているのだと、私は考えています。邪魔が気にならない人は、頑固者や非社交的な同僚に苛立ちを感じることがあります。例えば、重要なメッセージを渡すためにデスクに寄ったときに交わすような、ちょっとした会話さえも拒んだり、耳栓をしたりするような人です。

その一方で、邪魔をしてほしくない人は、出席したくない会議が3時から3時半に変更になったことで、連続して確保できるはずだった貴重な2時間を、分断せざるを得なくなってしまったことに関して、同僚が同情してくれないということに理解ができません。どんな仕事をしている最中なのかを示すサインをドアに表示することができたら、同僚も割り込んでいいタイミングなのか、それとも後にした方がいいのかを知ることができ、みんながハッピーになれると思います。

もちろん、この場合は、サインを掛けるドアがあることが前提ですが。では、“2つのタイプの仕事”理論から、別の見方をしてみましょう。開放感のある職場と個室がある職場との間にある無限の葛藤は、(数ある要因の中でも)この理論によって説明することができると考えています。邪魔が気にならない仕事をしている場合、同僚に囲まれていたり、アイデアを出したり、簡単な質問をしたりすることは、問題ないでしょう。即答によって得られた生産性は、ちょっとした邪魔から生まれる小さな損失よりも勝っています。

Grahamの著書には次のように書かれています。「Microsoftの求人広告に、大きなドアの写真が掲載されていたのを見たことがあります。“一緒に仕事をしましょう。仕事がはかどる環境を用意しています”」

一方、邪魔をしてほしくない仕事の場合、開放感のある職場は悪夢としか言いようがありません。こういった内情に通じている企業は、邪魔をしてほしくない人を雇用する場合、個室を用意しているところが大半です。Grahamの著書には次のように書かれています。「Microsoftの求人広告に、大きなドアの写真が掲載されていたのを見たことがあります。“一緒に仕事をしましょう。仕事がはかどる環境を用意しています”」。同様に、プログラミングの第一人者であるJoel Spolskyは、彼が立ち上げたFog Creekのオフィスをデザインするとき、建築家に[「開閉できるドアがついた個室は絶対必要です。これについて交渉するつもりはありません」](http://www.joelonsoftware.com/articles/BionicOffice.htmlと言ったそうです。

Spolskyはそれだけでなく、外部からの資金援助にも消極的です。その理由を彼はこう述べています。「ベンチャーキャピタルから資金援助をしてもらっている状況では、デベロッパのために個室を作ることはできないでしょう。私は、生産性を考慮した場合、個室を作ることは十分に価値のあることだと感じています。しかし、一般的なベンチャーキャピタルには、絶対に受け入れられることではありません。彼らは、成功している企業の贅沢の一つ、もしくはそれに似たようなことと考えるからです。それに、“なぜ、みんなが同じ部屋で話すことができないのか?”と思うようです」。なぜ、みんなが同じ部屋で話すことができないのか? 私たちみんな、もうその答えは分かっていますよね。

メールの受信

同じようなことで言うと、仕事を開始する最初の数時間は全くメールをチェックしないということに、多くの生産性あるライターが賛成している理由は、邪魔をしてほしくない仕事のスタイルにあると思っています。メールのチェックによって仕事が邪魔される時間は、わずか30秒程です。メールを読んだり返事をしたりするのも、さほど時間がかかることではありません。それに、メール対応をしているときは、何かを作り出している、何かの役に立っている、この世界で自分が必要とされている、と感じるはずです。しかし、簡単な質問に答えるために(もしくは、衝動的にメールタブをクリックしてしまうことで)、毎回、邪魔をしてほしくない仕事が出来ずにいると、アーチにある半分のブロックが崩れ落ちてしまいます。それどころか、アーチを作ることさえできない可能性があります。友人からの手紙ほど、想像力をかき消してしまうものはありません。

もちろん、2通りの異なるタイプの人間がいたり、異なるタイプの仕事をしたりするという考えは、少なからず単純にとらえすぎています(明確な二分法は単純すぎるということなのでしょうか? 誰がそんなことを考えたのでしょう)。邪魔をしてほしくない仕事が日常の主な仕事であるということに、すぐに気づけるのが数人だったとしても、ほとんどの人間が日常生活の中で、邪魔をしてほしくない仕事を何かしらしていると思います。早朝や深夜、どんな時間帯でも、そんな時間を優先すべきです。邪魔をしてほしくない時間を見つける(守る)チャンスは、ほんのわずかでもあるはずです。

邪魔をしてほしくない時間は意識して守っていない限り、すぐになくなってしまうという厳しい現実を受け入れることです。無秩序へのゆるやかな退化は、私たちが断固としてその流れに立ち入らない限り、止まることなく続きます。どんな措置を取ってでも、できる限り邪魔をしてほしくない時間を守ってください。例えば、Wi-Fiの電源を切る、クローゼットの中で仕事をする、子供が(また)水ぼうそうにかかったので、家にいる必要があると装う、などです。もし、アーチを作るのであれば、まずはアーチの周りに立てるフェンスに資金を充てることが重要です。このフェンスが、吠えている猟犬を外の世界にとどまらせる役目となります。

時間の中のスペース

邪魔をしてほしくない仕事について、もう少しヒントをお出ししましょう。1つ目は、もし邪魔をしてほしくない時間を決めなくても良いのであれば、こう言ってみることです。「この仕事は朝8時から開始します。メールのチェックは、それが終わってから行います」。これが最善の策でしょう。

Grahamは違った言い回しでこう述べています。「邪魔が入ると分かっていることは、予期しない邪魔よりも厄介だ。例えば、1時間後に会議があると分かっていたら、大がかりな仕事を始めたりはしない」。邪魔をしてほしくない仕事を延々と続けるのは不可能です。どこかであなたの脳は働かなくなり、何か別のことをしたくなってきます。しかし、ガス欠になるまで一般道を走り続けるのと、後ろからパトカーが迫ってくるのをサイドミラーで目視するのとでは、大きな違いがあります。後者の場合、恐らくあなたは「逃げられない」と考え、止まる必要がなくても車を路肩に止めるでしょう。

Grahamは違った言い回しでこう述べています。「邪魔が入ると分かっていることは、予期しない邪魔よりも厄介だ。例えば、1時間後に会議があると分かっていたら、大がかりな仕事を始めたりはしない」

2つ目は、邪魔なこと全てが平等に起こっている訳ではないいうことを理解することが大切です。Grahamが言っているように、「邪魔が危険と判断されるのは、それがどれくらい続くのかではなく、どの程度あなたの脳をかき乱すかにあります。プログラマは、サンドウィッチを買いにオフィスを離れたことで、書いていたコードを忘れてしまうことはありません。しかし、好ましくない種類の邪魔があった場合、あなたの脳は30秒でリセットされてしまいます

ここでGrahamが言っているのは、いつものお店でサンドウィッチを買う場合です。もし、別のお店で同じサンドウィッチを買うとなれば、別のことを考えるようになり、アーチが壊れてしまいます。正確に表現するのが難しいのですが、邪魔を受け入れられるかどうかは、それらを意識せずに、機械的に向き合うことができるかどうかにかかっています。全く予想外の邪魔や決断を迫られるような邪魔は、そうそうないでしょうから。

私と一緒に働きましょう

最後に、邪魔をしてほしくない仕事をしている人を部下に持つマネージャへ助言です。エグゼクティブの立場にいる私が言うと自分勝手な懇願のようにも聞こえるかもしれませんが、私は、一人にさせてほしいとか、ただ座っているだけでぼんやりしているように見えたとしても邪魔をしないでほしいと言っているだけではなく、同僚が私に重要な質問をしたかったとしても、私の邪魔をすることは許さないのです。昼休みに30分間邪魔されるのは構いません。何が違うかって? 何も違いません。馬鹿げているということは、私も承知しています。ですから、ここでは頭から信用してもらうことが必要なのだと思います。

邪魔をしてほしくない仕事がどれだけ楽しいのか、ということを理解することが重要だと思います。子供のころ、すばらしい発明やファンタジーあふれる冒険など、空想の世界を創り上げていたことがあるでしょう。家族に夕飯の支度ができたと呼ばれても、その物語から離れることができなかったことはありませんか? これは邪魔をしてほしくない仕事です。特別な人に会う時の気持ちはどうでしょう? その人を深く理解するために、夜通し2人で散歩したり話をしたりすることだけを考えていませんでしたか? これも邪魔をしてほしくない仕事です。邪魔をしてほしくない仕事は、Newtonがリンゴの木を見つめていたこと、あなたが見つけたパラダイスということです。考えている以上に、日常の大部分が邪魔をしてほしくない仕事なのです。ですから、邪魔をしてほしくない仕事をしている人や邪魔をしてほしくない仕事をしなければいけない状況にある人が、この聖なる時間を他のことに費やすなど、あり得ないと思っています。

マネージャのみなさん、今こそ英雄になれるチャンスです。正々堂々と、邪魔をしてほしくない人と外の世界の間に立って剣を振りかざし、「通さないぞ」と叫んでみましょう。
脳の奥底、測り知れない洞窟では、邪魔をしてほしくない人が、すばらしい会社の基盤となる、アーチや砦、ドームを築いているのですから。

この記事は、本来の仕事に支障をきたすことなく、8時から12時の間に熱意をもって書き上げました。